カーッカーッ
体育祭の種目決めから数週間が経ち…
〜〜♪
〜〜♪
『〜っ!…ハァ…ハァ。あぁ〜疲れたぁ〜!』
『でもええ感じやない!?』
私は今、体育祭当日の開会式で毎年行われるというクラス対抗”応援合戦”の練習に参加していた
応援合戦…この応援合戦にはそれぞれクラスから”団長”と”副団長”が選出されて
その二人が主にそれぞれクラス対抗で応援合戦を行うらしい
それが終わってから5分程度それぞれ持ち時間があり演舞やらのパフォーマンスをするらしく、私は何故か”副団長”に選ばれただけでなく
バンドをやっているからと言う理由で何故か演舞の方にまで出演することになったのだ
まぁ…リズム感鍛えられるし侑にバカにされた体力もつくから良いんだけどさ
双子は恒例らしいから分かってたけど…副団長って誰なんだろう
美琴とはバンド内でも楽器をシャッフルした際にお互いのポジションを入れ替える立場だ…
ときにはどちらかが互いのメイン楽器を演奏して、どちらかが歌う
所謂同じポジションの”ライバル”のようなもの
一応リーダー張ってる以上、負けるわけにはいかないな…
合戦の言葉……?
ーーーーーーーーーーーーーーー
~回想~
ガタッ
ガタッ
ガシッ
え…何この子応援合戦ガチ勢なの..?そんなに凄いわけ?
…なんか出てるって..吹き出しが。わかり易すぎて断れないじゃんもう…
ーーーーーーーーーーーー
~現在~
完全に忘れていた…。今日帰りにでも考えて帰るか
どうせ団長であるはずの侑も何も考えてないだろう
最悪当日思いつくままに言えばいいのだ。そのほうが合戦っぽいだろ
パクッ
少し変わった味がするな。ただ甘いだけじゃないような…
でも何だろうこの感じ…
パクッ
あと何か…眠気が…
応援合戦に自分のことを誘ったクラスメートから貰った”おすすめのチョコ”に
多少の違和感を感じながらも、美味しい事には変わりなく、市販のものらしかった為特に気にせず溶ける前に食べてしまおうと
黙々と口の中へと運んだ
『せやからさっきのはお前がっ___💢』
『あ”ぁ”ん!?お前が悪いんやろうがっ!この人格ポンコツっ💢』
『おいお前らいつまでやっとるんや…』
『いい加減にしなよ。』
『そうや!そっちのクラスの副団長ってあなたの下の名前___』
誰だ…?というか…眠い..そして何か…猛烈に…
何かに引っ付きたい…抱きまくらとか…
ギュ~
この匂い…落ち着く…眠い..
煩いな…
カプッ
ギュ~
煩いな…抱きまくらも見つかったし寝させてや…
あれ…本当だ。というか美琴も居たの…?
抱きまくらじゃ…なかったのか…
ギュ~
カーッカーッカーッ
-侑side-
落ち着く…匂い…
ゾワッ
さっきから何なんっ?うなじ触られるとムラムラするから今やめぇやっ
ゾワッってすんねん!ゾワッって!
そういって俺は勢いよく体を傾けておぶっていたそいつの体を半分思い切り下へ落とした
急に重力が下へ移動したことに本能的に落ちると思ったのか、反射でそいつは首に回していた腕に力を込め
ついでに先程までしつこく触っていた俺のうなじあたりに噛み付いてきた
気づけばそいつにうなじあたりに噛み付かれたせいで本格的に一箇所に熱が集中し始めていて
…玄関の扉閉めた瞬間喰ったるからなお前
俺やって結構耐えてたほうやと思うで?今のはお前が悪いんやからな
こいつ…もう寝やがったで。ちゅーかそもそもこいつ…今日俺泊まるっつってたこと覚えとるんか?
いつもそうやけど、高確率で忘れとるから帰りに様子見て突っ込まれるまでついていくと
家が近くなってきてからようやく『泊まるって言ってたっけ』とか言ってくるんや
絶対覚えとらんなこいつ…まず開口一番俺が普通に部屋にいることに対する驚きから始まりそうやな
さっきから何がおもろいんや…なんの夢見とるんやこいつ…
ほんまに…普段の学校での様子とバント活動をしているときと、たまに見せるこういう緩々な態度との差がエグいねん…
それぞれの顔に毎回面影がなさすぎて、もはやギャップがギャップとして機能していない気がする
最初のほうこそこいつのあまりの振り幅に毎回振り回されてはいたが…
慣れとは怖いもので、もはやちょっとやそっとの事では動じないのだ
動じないようにしている…急に来るため反応していると疲れるし。
そんな事を考えているとあっという間にそいつん家につき、以前同様鍵が入っているであろうリュックのポッケに手を突っ込み鍵を弄り出した
ガチャッ
ほな、そろそろ起きてもらわな
バタンッ
家に入るととりあえず背中のそいつを玄関に下ろし、手に持っていた荷物をそのへんに適当に置いた
片手で先程振り落とすフリをした際に噛まれたうなじ付近に手を当てながら、美琴がしていた様に
そいつのほっぺたをつねったり引っ張ったりしてると、やっとそいつは目を覚ました
まだ菓子に入ってた酒抜けとらんやん…一個に含まれてる量は少なくとも、一度に全部食べるからや…
絶対飲み会とか、行かせたらあかんやつやなぁ
でもまぁ…明日部活も休みやし
酒が入っているとはいえ、コイツのこう..大人しいのも珍しいしな…腹減ってきたわ
考えとるな?(笑)なんで俺がおるんかって
今朝言うとったからな俺は。そんで許可ももらっとった。来週体育祭やし、こいつにそのつもりはなかったんやろうけど…
まぁ土日挟むし大丈夫やろ。この状態のこいつ喰わんほうが何や勿体ないわ
元からそのつもりやったしな、俺は
俺は一瞬考える素振りをしてから大人しく口を開いたことで見えたそいつの舌を掴んで
それをそのまま指の腹で撫でながら反対の手で腰辺りに触れながら話した
猫は尻尾の付け根辺りに性感帯があると聞いたことがある
こいつの場合それは耳だとは思うが、従来猫っぽいこいつのことだ。ココもあながち間違ってはいないらしく
よく腰辺りに触れられるのを嫌がる。特に学校では触ろうとすると威嚇されるくらいだ
まぁ今ベロ掴んどるせいでうまく喋れんのやろうけど
ムニムニ
毎回思うけど口ちっこいよなぁこいつ…ほんまにええ顔しとる
酒弱いのってええかもなぁ。もろ媚薬みたいなもんやんか
そいつが何か喋るたびに舌を掴んでる俺の指にそいつの舌が絡みついてきた
ほんまに危険やなこいつ…お菓子に入っとるちょっとのアルコールでこんななるんやったら
ちゃんとした酒飲んだらヤバいで?みとる分にはかわええからええけど…
こんなん外でやられたらどこの誰かも分からんやつに喰われてまうわ…自分から喰われに行ってるようなもんやし
色々とそいつの変貌具合に心配になりながらも、ついには突っ込んでいた指をしゃぶりだしたそいつの舌をもう一度ちゃんと掴んで引っ張り出した
ーーーーーーーーーーーーーー
~今日の昼休み~
ーーーーーーーーーーー
あかんなぁ。世の中、ええやつばっかやないんやで?
お前が他の男んとこ行かへんのは分かっとるけど、そう無防備やと馬鹿な奴は寄ってくんねん
男はみんな、”喰えそう”と思ったら”喰う”で?特に普段ほぼ隙のないお前みたいなやつのこんなん知ったら尚更や
流石にここではできないため、俺は一度そいつの舌を解放し、そのまま横抱きにして部屋へと向かった
他の奴らに”喰われるん”は嫌やし…今日たらふく喰って注意喚起しとかな
…その呼び方あかん……。酔ってるとき限定なん?誰ぇ?この可愛いやつ…俺知らんて…
普段のコイツなら
とかやんっ!!最高やなっアルコール!!
ギシッ
ただ眠気にまで作用する点だけは嫌やな…
寝させるつもりも無いけど
まだ時間はたっぷりある。やからといってもたもたしとったらお前寝てまうやろ
俺やなくて治に引っ付いたこと…何気に根に持っとるんやからな?
スナやったらまだマシやったかもしれんのに…
ナデナデ
優しくする自信も余裕も..ないからな?
やっぱ今日は大人しいな…?されるがままって感じや
クチュッ
クチュッ…
俺がそう聞くと、いつもそいつは…
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー
あかん…俺もちょっと酔ったんかな…?
なんか今妄想が現実で聞こえた気がする…
それならなおさら、自制きかんで…?
っコイツ…ほんまに煽るのうまいやん…
ええで?もとから寝かすつもりなんてないわ。無茶苦茶にしたる
今こそいつもの調子に戻ってはいるがついさっきまでベロベロに甘えたで幼児化しとったこいつは
俺らで言う北さんと同じ立場に居る。しかもすでに夏休みに出たあのフェスで将来デビューすることも決まっとる。そのリーダーや
立場上1番おえらいさんやらとの付き合いとかで飲みの場に行くことになるだろうが…
こんなん絶対あかんて…今日はまだ誰かに会う前に見つけられたから良かったものの
クラスの奴らとか..
『柊さんて、めっちゃスタイルええよな〜?あれで楽器も歌もできるんやろ?』
『しかもサバゲーやっとるらしいで?ええ感じに筋肉付いてそうよな〜。腹とかエロそう(笑)』
『何かエエにおいするしなぁ〜。ええなぁ~侑は〜』
…こんなん見られたら襲われるで?考えたないけど…
コイツ..そういえばいつから起きとったんや
学校であんななっとったこと、覚えとるんか?
やっぱ覚えとらんのか..なら尚更どうにかして分かってもらわんとまたやりかねないやん…
前よりもっとお前のこと..大事なんに…やっと自分のもんになって、ちゃんと守れる立場に居るのに…また他の誰かに無理やり抱かれるようなことされたら…
考えただけで怒りでおかしくなるわ
でもお前…普通に言うても分からんのやろ?自分に向けられる好意にすら、まともに気付けへんやつやしな…
多分こいつの中に、嫉妬とかそういう感情はない…というか
前に平野が何気なく聞いたことがあったらしい。そん時こいつは…
~回想~
ーーーーーーーーーーーー
~現在~
ギシッ
ナデナデ
気持ちが繋がっとっても…他の人間の考えまでは変えられんのやで..あなたの下の名前?
お前がその考えでまた今日みたいなことするつもりなら..ちょっとくらい意地悪してもええやろ…?
全くヤキモチ焼かれへんのは、何か嫌やねん
俺は試すようにそう問いながら、そいつの首から胸元にかけて順に自分の跡を付けていった
チュッ
カプッ
”他の女を抱いた”…あなたの下の名前以外の奴を..
そう絶対にありえない話をしながら、そいつの身体に跡をつけることはやめなかった
なぁ、今どう思っとるん…?これでも平気って言われたら..どうすれば分かってくれるん?
俺のこの気持ちは…他の誰にも渡したないっっていうこの気持ちは…
お前には…どうしたら生まれる?
信じるだけやともう…満足できへん…。お前があんまりに真っ直ぐで綺麗なもんもっとるから
たまにその真っ白なこころ、汚したくなんねん
お前…知らんのやろ。こういう気持ちも。
何かを発したそいつの表情をみると…
何や…その表情…お前今..すごい顔しとるで…?
そいつは、普段のまるで全て見透かしたような真っ直ぐな瞳とは異なり
そんな顔されたら、余計に引き返せんくなるやろ…
一瞬目があったと思えば煮えきらない、困惑した瞳を俺の方からそらした
分かりやすく目をそらしたそいつにそう言いながら、先程まで付けていた跡を指で触れるようになぞった
ガシッ
別に…俺やってこんなこと言いたいわけやない。
…流石に言い過ぎたか?作り話だとしても、ありえなさすぎて自分で自分が糞やって思うわ…
けどそんな顔、するとは思わへんかった..。いっつも何も言ってこぉへんし、平野の事もあったし…
あとキスマ…
例えありえもしない作り話だとしても、
ここまで言ってしまったためどう収集をつけたら良いかがわからず、全部嘘だから、と謝ろうと思っても、視線だけそらすそいつに中々言い出すことができず
諦めて続きをしようと声を掛けると、突然腕を引かれ自分が先程そいつに付けていたとこと同じようなところに同じ様に噛み付かれた
いや…正確には初めてそいつはただ噛むだけでなく”跡”を付けるように噛み付いてきた
こいつっ…訂正くらいさせてくれてもええやろっ
『侑君っ…//』
こいつっ一回落ち着けってっ…
息っ……できへん..からっ!
ガシッ
ギュ
ほんまに…他人優先やなこいつは..どんな理由やねん
ますますこんなありえへん話しとる俺最低やん…
そういってそいつは両手で顔を隠すようにして、声を殺しながら泣き始めた
今更こいつに、「さっきの話は全部嘘だから」と言ったところで、こいつの胸の内は晴れないのだろう
こいつが言っているのは“そういう”ことではない。それくらい分かる
変に意気地になんてなるんじゃなかった…泣かせてばっかやん、俺…
スナやったら…もっとうまく伝えんのかな…幼馴染やし…
『でも安心しなぁ?何処までもアンタしか見てないから』
『ただ“真っ直ぐ過ぎる”だけ〜』
こいつは何処までも真っ直ぐで、たとえ俺よりしっかりしてて、大好きな北さんができても
昔から隣にいるのが当たり前で、それはこれから先も変わらないと再度約束をしたスナが居っても
俺と同じ顔して、同じ様にコイツのこと好きな片割れに好きと言われても…
ずっと俺の方を真っ直ぐにみとってくれとる
けどせやから、心配にも不安にもなんねん。
俺もお前しかみとらんけど、それでも言い寄ってくるやつは居んねん
そういって顔を覆っていたそいつの両手を取って握った
分かっとる..分かっとるんやけど…やっぱちゃんと確かめたいやん
バフッ
バフッ!
元はと言えば自分がこんな話したのが悪いのだが、俺がそいつの心情の核心を突くような事を問うと
そいつは今まで見たことが無いくらいに顔を赤くして、思いきりクッションで人のことを殴ってきた
バフッ!
っそれはあかんっ!せっかく明日何もないのにっ!!寝かせへんてさっき言うたやろっ!
これは別に今に始まった話ではないが、どうやら俺らの間ではしんみりした空気も所謂”そういう”空気も長くは続かないようで…
お互いに売り言葉に買い言葉という性分らしく、気づけば今のような空気感になってしまっている
何ですぐこうなるんっ!?俺はいちゃつきたいねん!さっきの酔った状態のコイツなら…
ってあかんあかんっ!もろそれが原因やん、今回のこと…
ちゅーか待てよ…俺まだこいつからサムに引っ付いたことについて何も聞いとらんで?
何さも何も無かったみたいに寝ようとしとるん?待てやお前…
あいつに引っ付いたことについての怒りは恐らくただの“嫉妬“
それだけなら別にいつもと変わらないし俺もここまで怒りはしない。広〜い器で許したる
以後俺の目が届かないとこで酒を含んだものを飲食しないと約束できるんならやけどな
せめてスナか北さんが居るときだけにせぇ
ガシッ
ただな…俺が本当に言いたいんはそこちゃうねん
ギシッ
たとえ酔っ払ってたとしても…双子やから匂いが似たようなもんだとしてもっ!
せめて認識はせぇや!ジャージ=俺ちゃうわっ
ギュ~(手首を強く握る)
さっき言うたやろ?“朝まで付き合ってもらう“て
まだ夜は長いで…あなたの下の名前?
ペロッ
ジュルッ
やっぱええなぁその顔…酔っとるせいで素直なのもええけど…
やっぱこっちのほうがええなぁ
酔ってない、普通のお前に呼んでほしいんや
ナデナデ
えっちょ…待ってやっ
もう寝とるし…子供かて。寝る言うてから本当に寝るまでのスピード早すぎひん?
毎回ほぼ寝落ちやぞ?
俺がそう完全に夢の中へと行ってしまったそいつに問いかけると
寝ぼけているのかこいつを見つけた際にサムにやっていたのと同じように
何か寝言のような事を言いながら俺の首に腕を回して抱き着いてきた
今度こそは間違っとらん、間違っとらんけども…
調子狂うからやめてほしい。特に一方的に切り上げられた今は切実にやめてほしい…
落ち着いたのか、そいつは多少モゾモゾと動いたかと思えば
俺の胸元に顔を埋めてそのまま深い眠りへと落ちていった
北さんが“妹“みたいやって感じる気持ち…ちょっとわかった気ぃするわ…
ポンッポンッ
まぁ…こいつにとっては俺も相当なんやろうけど。
多分明日起きたとき思いきり蹴飛ばされる気がするけど…
恒例すぎてもはや慣れたわ…お前のおかげで相当図太くなったと思うで?
次に目が覚めたときに思いきり蹴りが入ることを覚悟して、そいつに引っ付かれたまま自分も引っ突き返した状態で眠りについた
‐翌日‐
ボコッ
ボコッ
〜♪(アラーム)
〜♪
ポチッ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!