花見から帰ってくると、残った料理やお酒で軽い二次会が行われた。
土方さんも少し休んで、今は料理を食べている。
「いやー、食べたし飲んだし、満足だわ。じゃ、俺先に部屋戻ってる。」
『片付けする時呼ぶねー。』
「あいよー。」
桜夜が部屋を出ると、いつかみたいに私と土方さんが残った。
また2人で桜を見ながら、静かにお酒を飲む。
『私、今日凄く楽しかったよ。
"家族"と花見をするの、夢だったから。』
覚えていないかな? と思いながら、私は話を続ける。
『でも、きっと土方が居たから、もっと楽しかったんだと思う。』
「俺も、(○○)が居たから、今年の花見は一段と楽しかった。」
「……あの時は、葉桜だったな。」
『覚えていたんだ?』
「あぁ。……なぁ、(○○)」
『なーに?』
「俺はまた、(○○)の横でこうやって桜を見ていたい。来年も、再来年も。
でも、来年は、また違う"桜"を見たい。」
土方は私を見つめると、ゆっくりと
「来年は……今よりずっと綺麗な桜を見たい。……だから、」
ー俺に残りのはなびらを、彩らせてくれないか?
『ーそれって、もしかして……!?』
私にはずいぶん勿体ないほど綺麗な言葉を使うものだから、意味に気づいて余計びっくりしてしまう。
少し嬉しそうに、照れくさそうに笑うと
今度は、はっきりと
ー(○○)さん、俺と結婚して下さい。
ーっはい!
月明かりに照らされ、綺麗に輝く桜の花びらが、私達の前を優しく舞った。
そうして2つの桜が優しく合わさって、幸せそうに笑った。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!