第18話

第14章 夜風
138
2020/05/15 13:23
……どうしよう。
私は完全に起きるタイミングを逃し、近藤さん達の結構重要そうな話を寝ているフリをしながら聞いていた。

どうやら土方さんが私を病院に運んでくれて、あれから2日経っているらしい。そして高杉達は大量の絡繰ー紅桜を使ってクーデターを起こすつもりの様だ。

話を聞いていると急に
「気を利かせて寝たフリしてんじゃねぇよ、この寝坊助。」
桜夜の声と共におでこに違和感を感じる。
『一応怪我人だぞこちとら!』

ギリギリの所でデコピンしようとしている手を止める。
「1人で無茶した罰だ。大人しく食らっとけ。」
『いや、桜夜の方が無茶した事多いじゃん!』

などとギャーギャーやっていると、
「煩いですぜ自称怪我人。」
『いや沖田さん、自称って何?自称って!』
確かに今騒いでいるけれども!違うじゃんこう言うの!

近藤さんによって桜夜が引き剥がされると、今度は土方さんがやって来てギュッと抱きしめられる。
『え、ちょ、土方さん!?』
驚いている私を他所に土方さんは

「女が1人で無茶してんじゃねぇよ……バカ野郎。」
ちょっと泣きそうな声で私の耳元で囁いた。
「お前は大人しく、俺に守られていればいいんだ。
俺がお前を……(○○)を守ってやるから、だから……」

「もう勝手に無茶な事はするな。約束してくれ。」
『うん、分かった……。ごめんね?心配かけて……ごめんね……!』
急に涙がこみ上げて来て、私は泣きながら土方さんに抱きついた。

落ち着いた私は改めて土方さん達と軽く会議をした。
他の皆もすぐにお見舞いに来てくれて、良かった と泣きながら言ってくれた。
少し嬉しくって、恥ずかしかった。

「あ、そうだ。」
『どうしたの桜夜?』
「いや、紅桜にこいつの血が吸われていないって事を言い忘れていたなーと。」
「え、どういう事なの?」

『すみません、すっかり忘れていました。私達"桜花族"って、もともと吸血鬼に対抗する力を持っていたんです。その頃の名残なのかな?で私達は血を直接渡せないんです。』

「簡単に言うと、"桜花族"は献血と輸血ができないんだ。だから紅桜に血は吸われていない
データ更新が吸血鬼みたいな仕組みで助かったぜ。」

「あ、そう言えば"桜花族"って吸血鬼が唯一血を吸えないって聞いた事が……」
『山崎さんの言う通りです。ちなみに、その頃から"桜奥義"ってあったんですって。』

「へぇ、そうなんだ。初めて知ったや。」
「まぁ、忘れていて欲しくは無かったな……。」
そんな会話をしていると、急に私の携帯に着信が入った。

『もしもし?……うん、大丈夫。……なるほど、了解。わざわざありがとう、じゃあねー。』
「誰からだ?」
『ぎ、銀時からです!体調とか聞かれました!』

本当は嘘だ。桂に情報を教えてもらっていたが、言えるわけないのでとっさに嘘をつく。
すると土方さん達も納得してくれていたらしい。

皆が屯所に帰って行き、部屋には私と桜夜だけになった。
『やっぱり私達が狙いだってさ。』
「まぁ、高杉が俺達を欲しいのは分かっていたが、なんであんな事させたんだ?」

あんな事 と言うのはあの夜の事だ。
『なんか、勝手に暴れていたらしいよ。よくある病気みたいな物だってさ。』
「なるほどな。後は?」
『そんなとこー。』

「了解、じゃあ俺もそろそろ帰るわ。明日退院できるらしいから、迎えに来る。」
そう言って桜夜も病室から出て行き、私は軽い検査をした。

どうやら明日、無事に退院できるらしい。
私は医者達が出て行くのを見送ってから就寝した。






プリ小説オーディオドラマ