翌朝、私達は朝礼を進行しながら、機会を伺っていた。
あの後話して、近藤さんだけには言っておく事になったから、何とかこの後ちょっと時間を貰いたいんだけど……
あっという間に朝礼は終わりを迎え、最後に沖田さんと桜夜が手を上げた。
『どうしたの?』
はっきり言って嫌な予感しかしなかったが平然を装う。
「「近藤さん、副長2人が皆に話したい事があるそうです/でさぁ。」」
……いや。いやいやいや!
何で知ってんの!?何で知ってんの!?
2人の言っている意味を察して焦る私達に、さらに畳み掛ける様に
「お2人さーん。ああいう話はちゃんと起きていないか確認した方がいいと思いやすぜ?」
「後、近くに人が居ないかとかな?」
『全部分かってんのかこんのドS同盟……!』
「え、何?結局話って何?」
私達は少し顔を見合わせると、決意して
「実は、その、俺達……」
『結婚する事にしました』
と正直にカミングアウトする。
予想通り皆が固まった。でもすぐに大声を上げて驚いた。
皆を落ち着かせ、近藤さんに早いかも知れないけど、色々見に行きたいから明日から3日程休暇が欲しいと頼む。すると、
「何言ってんの!今すぐいくよ!」
と1人で話を決めてしまった。
『え、ちょっと近藤さん?!』
私達は近藤さんに引っ張られ、ある場所へと向かった。
なんと、そこはとっつぁんの家。
着くなり近藤さんは私達の事を話す。
「そういう事ならおじさんに任せな。いい所用意してやるからよ。」
そうして今度はとっつぁんの車に乗り、あちこち飛び回った。
そこからは大変だった。
将軍様の所へ行き、経費で式の準備をさせてくれと失礼な事を言う2人を連れ出そうとすれば
「いいだろう。きちんと幸せになるんだぞ。」
と何故か許されてしまうし。
ある式場の費用が半分くらい貯金から出せるから、溜まり切ったらこことか良いかもね なんて話すと残り半分を勝手に出してくれたり。
そこから服やら髪型やら、色々な事を進めてくれる。
話しながら、式の話ってこんな急に、しかもトントン描写で進むのか と思う。
土方と目線が合うと、同じ事を思っていたのか、
「なんか、話が決まるの早くね?」
と耳元で話す。
『本当、私もびっくり。』
まだ若干困惑しているが、私達は幸せそうな笑みを浮かべた。
1日かけて式の話をあらかた終わらせると、2人にお礼を言って部屋に戻った。
『おやすみ』
「あぁ、また明日」
土方side
部屋に戻ると、桜夜がいた。
「悪いな、どうしても話しておきたい事があって。」
「……で、話しておきたい事ってのは?」
「(○○)の苗字の事」
予想していない事だったので、変な声が出てしまった。
「何で、その話を?」
(○○)のは、確か苗字を覚える前に……
と思い返していると、桜夜は
「俺ら裏は表より大人だから、表が覚えていない事も裏は覚えてたりするんだよ。」
そんな事も言っていたな と納得する。「それで、(○○)のフルネームは?」
「夜桜。夜桜 (○○)」
またしても予想外の事を言われた。
「夜桜って……桜夜を入れ替えただけじゃ?」
その疑問は想定内だったらしく、すぐに答えてくれた。
「俺達は、表の名前の字を借りて自分の名前にするんだ。俺の場合、あいつが苗字を覚えていない事もあったからこの名前にさせて貰った。」
「それは分かった。だが、なんでわざわざ俺に言って、(○○)に言わないんだ?」
と聞くと、少し悲しそうな辛そうな顔をして答えた。
「あんまり思い出させたく無いんだよ。……そんな訳で、俺の話は終わりだ。」
部屋を出て行く前に振り返ると、
ー(○○)の事をよろしくな。
桜夜にしては珍しく、優しい顔をしてお願いされた。
その顔にしっかりと頷き
ーもちろん。任せておけ。
と言うと安心そうに、満足そうに部屋に帰って行った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。