第5話
クリープハイプ 尾崎世界観
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キシキシと規則正しく音を立てて
今日も私は彼とシーツに溺れる
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彼氏と上手くいかなくなってから早2ヶ月
仕事が忙しいから、ごめん。
と言って同棲中の家に帰ってこなくなったのは
つい最近の事ではなくて
1ヶ月前、出張に行っている筈だった貴方を街で見かけた
若くて赤いピンヒールを履いた女を連れて
楽しそうに笑っていた
嗚呼、そういう事か。
私はもうとっくに愛想を尽かされている
そんな事薄々でもなく感じていた
私がそれとなく夜の誘いをした時
貴方はとても嫌そうな顔で拒否した
あの時からだったんだね
窓も開けずに紫煙を揺らす
こっちも見ずにスマホと睨めっこ
重たいマッシュの隙間から偶に見える
光の無い希望に満ちた眼
大人気バンド クリープハイプのギタボ
男性にしては少し高めの独特な歌声
キャッチーなメロ
比喩と嫌味と人間臭さたっぷりの歌詞
まぁ、私は大して聞いたことないけど
持ち前のえろさで
女の子達を落としてしまうなんて罪な男
そう、そんな男と私の現在地はラブホ
所謂セフレってやつ
どう出会ったのかはあんまり覚えてないけど
多分初めは酔った勢いで。
それからなんとなく連絡取り合って
ヤりたい時に会う
そんなずぶずぶなどす黒い関係
そんな事私が1番分かってる
じゃあ別れてどうしたらいい?
彼の家に住んでる私は何処に行けばいい?
祐介は拾ってくれる?
否、そんな事絶対しないでしょ
今は良い。
私が我慢すれば
明日は愛をくれるかもしれない
ねぇ、愛してよ
嘘でもいいから
まだ吸いきっていない煙草を灰皿に押し付けて
また私に触れる
いつもと違う
祐介の手つき
心做しかドキドキしている自分に
何処まで都合がいいのか。と呆れる
ふわっと香る
また、苦い香り
にやっと悪い微笑みの先に
きらりと光る銀歯
行為途中もちらちら見えるのが
えろくて堪らない
とんだ変態だな、私も彼も
せめてもの照れ隠しに
苦い口付けを。