俺は逃げた。
でも、俺は逃げ場がなくてすぐに見つかってしまいそうなクローゼットに隠れた。
なんでテオくんから逃げてるか?
それは、
テオくんが首輪と鎖を持って俺に付けようとしたから。
明らかにやばいよね?
絶対監禁する気じゃん!
ガチャ
もちろん、
返すつもりは無い。
テオくんは気付いているはずだ。
でもなかなかクローゼットを開けない。
どういうつもりだ?
テオくんは部屋を歩き回ったりしていた。
何も見えないかのように。
ソファーの後ろの壁に飾ってある俺らのイラストや写真をテオくんは眺めていた。
テオくんは写真に向かって話していた。
正直怖い。
こんなテオくんは初めてだ。
次にテオくんはまじめんに手を出した。
そして抱きしめていた。
テオくんはまじめんをそこらに投げ捨て、
また部屋を歩き回った。
こっちにテオくんが近づくたび、
怖くて怖くてたまらない。
そ、そうだ!
みやに助けを………
!?!?!?
やばい!
スマホ置いてきちゃった……
俺はいきなりの事だったせいか、
机の上にスマホを置いたままにしてしまった。
ばんっっ!!
テオくんはスマホを投げ捨てた。まじめんみたいに。
壊れてないよね……?
ねえテオくん、どうしちゃったの?
ねえ、
ねえ………
今日の撮影からなんかおかしかったよ?
なんかやけに演技うまいしさ。
正直怖いよ。2回目だけど。
俺は逆にテオくんの考えてる事がわかんないよ。
怖いよ、
俺はテオくんが怖いの。
テオくんはソファーに座った。
テオくんはこっちを見つめながら言った。
その目は光がなくて死んでいた。
怖い。
俺だってテオくんのこと大好きだったよ。
俺は見たくなかった。
テオくんの姿はいいものしか見たくなかったよ。
今の姿は見たくなかった。
………は?
狂う?喘ぐ?苦しむ?
なんでそんな姿が見たいの?
テオくんは立ち上がった。
テオくんは部屋から出ていき、どこかへ行った。
このすきに、
逃げなきゃ。
俺の本能がそう言った。
俺はクローゼットの扉を開け、
ドアノブに出をかけた。
テオくんはどうやら他の部屋を見てるようで、
周りにはいなかった。
俺はドアまで一直線した。
テオくんのその笑顔でさえ恐怖に感じた。
お面のような笑顔。
無邪気というレッテルを貼ったような顔。
まるでピエロみたいだ。
怖い。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。
テオくんに腕を掴まれ、
部屋に連れてかれた。
と思った。
違う、クローゼットだ。
さっきまで隠れていたクローゼット。
なんで?
さっきは部屋だったのに。
テオくんは淡々と言った。
顔は笑ってる。
虚の笑顔で。
テオくんは俺に首輪を着け、
手足を拘束し、
口は猿ぐつわで喋れない。
そしてクローゼットの中へと俺を入れた。
テオくんはまるで、
" サイコパス " かのような、
いや、サイコパスだ。
テオくんは笑った。
テオくんがクローゼットの扉を閉めた。
喋れないから助けも求めれない。
身動きがとれないから出れもしない。
俺は、
暗い暗い、
クローゼットの中にいる。
テオくんが言った。
とても悲しそうだったように聞こえた。
たぶん、
気のせいだ。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!