第32話

あの頃の君はもういない・3【テオくん】
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2018/03/19 11:55
じんたんはまだ脳死状態のままだ。


まだなにも変化はない。







今日もこれからお見舞いに行くとこ。


もうすぐで病院が見える頃だ。



俺は早くじんたんに会いたくて走った。





じんたんの居る病室のドアを開け、中へと入って行った。

テオくん
じんたん、調子どう?
もちろん、じんたんからの返答はない。


どこかを見つめているだけだ。
テオくん
いやー、いい天気だね
俺は悲しみを隠すためにひたすらじんたんに話しかけた。
テオくん
こんないい天気なんだしさ、お散歩しない?
お散歩と言っても、


病院の敷地内を歩くだけ。





俺はじんたんを車イスに乗せて部屋を出た。


病院から出て、中庭?っぽい所へ行った。
テオくん
いい天気だね、雲がひとっつもないよ
快晴。


雲がひとつもなくてすごく綺麗だった。
テオくん
あったかい、いや、暑いくらいだね今日は
日陰に入ろっか
俺は車イスを押して屋根のあるベンチに座った。


じんたんは相変わらずどこかを見ている。

その目は焦点があっていない。
テオくん
……じんたん、空だよ、スカイ、ね、じんたん
答えてくれるはずもないじんたんに俺は話しかけた。
テオくん
ほら、こーやってピースサインを掲げると
"スカイピース"の完成、すごいでしょ?
俺は空に向かってピースサインを掲げた。




いつもならじんたんも掲げてくれたのかな?

『そうだね』ってはにかんでくれたかな?


でも現実は違う。


笑うどころか、

俺すら見てくれない。




ねえじんたん、

じんたんが答えてくれないのはあの時のこと怒ってるの?


俺が助けなかったから、

怒っちゃったの?
















じんたん
テオくん!早く行こっ!あのスイーツ限定だから!!
テオくん
はいはい
じんたんはコンビニの期間限定スイーツを買いたいと、

俺まで連れて行った。



じんたんと一緒に行けるとか最高だから嫌な気はしなかった。

じんたんは『早く早く!』と俺を呼んでいた。



その姿が愛おしくてつい、遅く歩いてしまう自分がいた。




でも、それが間違いだったのかもしれない。
じんたん
もおー!テオくん遅いー!わざとでしょ!?
テオくん
わざとじゃないよ〜
じんたん
顔がもうわざとだもん!!
テオくん
どんな顔だよw
じんたん
もう俺先行くからね?
期間限定のスイーツ、めっちゃ食いたかったのか、

ついには俺まで置いて走って行った。







赤信号だったなんて気付かないで。
テオくん
じんたん!あぶないっ……
じんたん
え?
じんたんが振り返った瞬間、


トラックのライトの光で周りが見えなくなった。



やっと目が開けた頃にはじんたんは目の前から消え、


遠くの方で倒れていた。




血まみれだった。




俺は血まみれのじんたんに近寄った。


そして揺すった。









あの時
テオくん
じん、たん……?


俺が自分の欲望を抑えてじんたんのスピードに合せて歩いてたら、

テオくん
じんたん…?


もっと早く気が付いてじんたんを道路から突き飛ばしていたら、

テオくん
じんたん……!

俺がじんたんの身代わりになっていれば、

テオくん
じんたん!じんたん!!


それかあの時じんたんの腕を掴んで『ゆっくり歩こうよ』って言ってれば、

テオくん
じんたん…!じんたん……………起きてよ……………


こんな結末にはならなかった?


なあ神様。












答えてくれよ。

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