テオくんは苦しそうに言うと、もっと激しく、獣となった。
涙が溢れる。
痛くて苦くて暗くて苦しい。
でも愛されてるなぁって思う俺は可笑しいだろうか。
俺にちょっとした暴言を吐いてからも、テオくんは謝り続けた。
決して騒がず慌てず、
冷静にゆったりと静かに謝った。
ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね、ごめんね…
そんな寂しそうに言わないで。
哀れなほど涙で溢れた顔。
いつも以上に泣いているテオくん。
外には彼岸花が赤く燃え上がるように咲いていた。
鮮やかで華やかなのに、
何処かしら哀しく切なげな感じが漂う。
まるで二人、涙を流したあの夜の日の事のように。
そして冬に入る頃だ。
外に春から咲いていた犬泪夫藍が枯れた。
動画をいつもの様に撮る。
笑って騒いで。
大好きな人の隣で。
でもテオくんは冬になるにつれ、スカイハウスにあまり来なくなった。
撮影の時は来たけど、それ以外は来なくなってしまった。
動画の中では元気いっぱいなのに。
ある日、
テオくんが置き手紙と花を置いて消えた。
もうすぐで冬が終わる頃だ。
『ごめんね』
その手紙は所々水に濡れたようにぼやけていた。
何度も消した後があった。
きっと、何を書くか迷ったんだろう。
大好きな人の突然の疾走に対し、
俺は涙が出なかった。
でも床には確かに水滴が落ちていた。
嗚呼、
泣いたのに気が付いていないんだ。
本当は泣いていたんだ。
雪がまだ残っている白銀の街。
そんな中に季節外れの蒲公英が咲いていた。
その姿は健気で儚く、美しかった。
ただの雑草なのに。
置き手紙の隣にあった花の名は勿忘草。
水色で小さく…まるで……
空色だった。
ずっと前からスカイハウスの壁を張っていた、
鉄線のツルが枯れた。
解放するように。
俺はその日、朝顔のように嘆いた。
水色の朝顔のように。
冬が明け、
俺は黄水仙と青の花一華を買った。
いつかこのふたつの花弁が散って、
大好きな人に届いたらいいな。
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はい、すみません。
試合とテストが被りました。
勉強しました。
まず解説コーナー。
これは見ての通り花言葉です。
花一華(はないちげ-アネモネ)
花言葉は『君を愛す』『嫉妬のための無実の犠牲』。
じんたんに送ったアネモネは、
じんたん目線からすると愛すの方の意味ですが、
テオくんは真逆です。
これはみやをこの時点でテオくんが殺していることを意味します。
じんたんはよく惚気話をしにみやの家に行っていたことを嫉妬していた。
とっさにテオくんは嘘をついた、まるでじんたんを庇うように。
犬泪夫藍(イヌサフラン)
花言葉は『わたしの最良の日々は終わった』。
春に咲き、秋に枯れる。
春の頃は楽しく過ごしていた、でも秋にかけて崩れ始めることを意味します。
鉄線(テッセン)
花言葉は『しばりつける』。
ずっと前から張っていたテッセン、
ということはテオくんは最初からじんたんを縛り付けていたという意味です。
勿忘草(ワスレナグサ)
花言葉は『わたしを忘れないで』『真実の愛』。
テオくんの最後のメッセージ、忘れないで欲しいという願い。
それと本当に愛していたよというものです。
蒲公英(タンポポ)
花言葉は『お別れ』。
これはそのままの意味で、テオくんとのお別れを意味しています。
朝顔(アサガオ)
花言葉は『はかない恋』
1年半程で終わってしまった苦い恋。
それはあまりに儚いものだったことを意味しています。
彼岸花(ヒガンバナ)
花言葉は『悲しい思い出』。
あの日の涙の夜を過ごしたのは、
二人にとっては悲しい思い出となって脳内に残ってしまう。
黄水仙(キズイセン)
花言葉は『もう一度愛して』。
本気で愛していたテオくんへのメッセージ。
これは願望に近いものだ。
青の花一華(青のはないちげ-青のアネモネ)
花言葉は『あなたを信じて待つ』。
これもキズイセン同様、テオくんへの届かぬメッセージ。
いつか戻って来てくれると信じて。
ちなみにタイトルもワスレナグサの花言葉、『わたしを忘れないで』という意味です。
((大人の事情で誰目線か書けなかったかるらー氏。
季節と花言葉を合わせるのに時間がかかりました。
その割にあたくしのお友達こと神様、りおなと被ったというね。
まさかの花言葉被り!というね。
そして意味を知ってからもう一度ど読み返すといいで((((
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。