突然だった。
じんたんがトラックに轢かれた。
幸い、命は助かっている。
が、
じんたんの脳は完全に死んでいる。
いわゆる、"脳死"ってやつ。
でもその脳死もじんたんのは特徴のあるものだった。
普通の脳死ってのはほぼ寝ている状態。
でも、
じんたんは起きている状態なのだ。
起きてって言っても目を開けて座っているだけ。
目は死んでて光が無い。
口は半開きでいつもどこかを見つめてる。
焦点があってない。
話しかけても反応が無く、いつも黙っている。
いや、喋らないのほうがいいか。
なんでじんたんなんだよ。
どうして他の誰かじゃなくてじんたんなんだよ。
まだ伝えてないじゃん。
『好きだ』って。
でも、じんたんが生きてたとしても伝えれなかったんだろうな。
だから今言うね。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!