俺はテオくんが好き。
完全な片想い中。
だから今日はテオくんを遊びに誘う予定。
公園のふたつのブランコ、
右はテオくん、
左は俺が乗ってた。
そこにみやがやってきて『貸して』と一言。
俺は『いいよ』と言った。
二人乗りすることだって出来た。
なのに俺はすぐにブランコをみやに譲った。
テオくんの左にはみやが居る。
いつもは俺のポジションに。
今日こそは言う、
そう決めた。
引かれてもいい、
嫌われてもいい、
スカイピースがどうなったって、
言わなきゃダメなんだ。
滑り台の上にいた俺は、
下にテオくんが居るのを見つけて滑って行こうとした。
でも、
かすちゃんが滑り台の滑る部分を逆走してきて降りられなかった。
かすちゃんは戻ってきて滑り台を滑り、
テオくんと一緒に向こうの方へ遊びに行った。
『やめて』と注意出来たはずなのに。
テオくんと一緒に乗ったシーソーは、
全然釣り合わなくて……
俺がどうしても下になっちゃうんだ。
体重がどうこうじゃなくて、
テオくんへの想いが重いんだよ。
だからどう足掻いだって上になることはないんだ。
俺が降りたらテオくんも降りてくれる。
そう思ったのに………
テオくんは人気者だから、
すぐに隣を取られちゃう。
もちと乗ったシーソーは釣り合ってて、
ああ、
愛ってそんなに重いものなんだなって………
次はテオくんはひとりでジャングルジムへと登った。
周りには人がいなくて絶好のチャンス。
俺は急いでジャングルジムに走って行った。
テオくんはジャングルジムのてっぺんにいた。
そして空を眺めていた。
俺がいることに気付いてないみたい。
俺はジャングルジムに手をかけた。
登ろうとした。
したよ。
なのに、
登れなかった。
腕と指に力が入らないんだ。
声も弱々しくて届かないみたい。
向こうの方からだれか走ってくる。
3人はスイスイ登っていって、
すぐにてっぺんに着いてしまった。
そして一緒に空を眺めていた。
俺はまた呟いた。
俺は泣いた。
誰も気付いてくれない。
泣いてるのに、
苦しいのに、
辛くて寂しいのに、
悲しいな。
ねえテオくん………
俺はベンチに座った。
なんも変哲もないただのベンチ。
ため息が出た。
無意識に。
泣きたい。
大声で思いっきり泣きたい。
でも出来ない。
そんな俺を誰も抱きとめてくれないから。
出来るわけない。
優しい声に俺は顔を上げた。
テオくんが立ってる。
確かにテオくんだ。
なんで?
ジャングルジムは?
みやは?
他のみんなは?
いいの?
遊ばなくて。
テオくん公園大好きじゃん。
テオくんは俺の左側に座った。
そしたら向こうから影が走ってくる。
まただ。
いつものこと。
当たり前。
日常。
テオくんのその言葉にびっくりした。
いつもなら『いいよ!』と笑顔で答えてくれるのに。
今は真顔で言った。
低めの声だった。
テオくんは真っ直ぐどこかを見つめながら言った。
話すことないし、
どこを見ればいいのかもわからない。
俺は空を見た。
星が出てきてる。
もうこんな時間なのか。
そう言えばこうやってしずかなじかん、
最近なかったよね。
久しぶりだね、ほんと。
テオくんはどこ見てるの?
わからないな。
ほんとに暗くなってきた。
街灯がつき始め、
虫が集っていた。
テオくんは俺の手を握りながらそう言った。
澄んだ瞳でそんなこと言われたら、
断れないよ。
俺は今ベンチにて、テオくんと座ってる。
神様、
この時間がいつまでも続いてください。
テオくん、
俺からもお願いね。
これが精一杯の告白だよ。
遠回しすぎてわからなかったかな?
テオくんはそう言って、
俺と肩をくっつけて手を絡めさせて離さなかった。
どうやら、
伝わったみたい。
ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー ー
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!