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2021/11/23

第1話

宇宙の海の果てに
椅子に腰を掛けてから、先程拾った手のひらに収まる程度の大きさのソレをマジマジと見つめる
ガラス…ではなく、鉄のような容器のボトルにコルク…の様な見た目の何かで蓋をしている
受取人
これって…あれだよな?ボトルメッセージ…だよな?
ソレは、ボトルメッセージと呼ばれる商品
古きを忘れずにのキャッチフレーズでお馴染みの株式会社Voの看板商品である
受取人
確か…これ1つで俺の1ヶ月の給料の半分…
人類の生活圏は、地球だけに留まらず宇宙にも及んで早数世紀
宇宙ステーションの外装の掃除をしている俺は、今日の仕事中たまたまこれを拾った
受取人
宇宙という海に、貴方の声をボトルメッセージとして漂わせませんか?…だっけ?
ボトルメールはボトルメッセージに
海は宇宙に
ものは変われど、人間の本質はこういうものが好きなのだろう
宇宙産業が始まった初期も初期に作られた、ボトルメッセージという商品は今も変わらず宇宙を漂い、終着点を探している
受取人
確か…1回しか収録されている声、再生されないんだったよな…これ…俺なんかが聞いていいのかな
情報の観点からなのか、技術の観点からなのかは知らないがここに収録されているお便りは1度しか再生されない
受取人
まぁ、でもこんな機会滅多にないし…それに…
宇宙ステーション清掃歴の長い先輩や運の良い同僚達のボトルメッセージ自慢を聞かされたことのある身としては、自分がそちら側に回れる機会をそうやすやすとは逃すつもりはない
宇宙清掃員という仕事はボトルメッセージを拾う率が高いとはいえ、極少数だ
受取人
ま、そうと決まれば一刻も早く部屋に戻るか〜
ボトルを落とさないように握りしめ、清掃員に割り振られている個室に戻る
濡れたタオルで体を拭き、消臭スプレーを身体にかけてベッドに腰を掛けて、机に置いておいたボトルを再度手に持つ
受取人
ここの蓋を右に回してから…あれ、回らん…
あ、えーーと押し込んでから右に回すのか…かっっった!!
ボトルの外に書かれている開け方をチラチラ見ながら、物凄く固い蓋をギニニニニと右に回す
すれば、カチッという音と共に蓋が外れた
女性の声
〜〜〜〜
受取人
あ、わっ、いきなり始まるのかよ!
慌ててその口を耳に当てる
女性の声
え?録音し始めは大体相手側の準備が出来てなくて聞かれないことが多い?
そういうのは始める前に言ってよね!!全くもぅ…
受取人
女の人だ…他にも誰かいるっぽいけどそこまでは聞き取れないなぁ…
理解できる母国語で良かったと胸をなでおろし、意識を耳に集中して声を聞く
女性の声
んっ、んっ、えー仕切り直しです
はじめまして遠い遠い何処かでこれを聞いている見知らぬ貴方…ヘヘちょっと恥ずかしいな…
女性の声
これを聞きいているということは、このボトルは無事に終着点に行き着くことが出来たのですね
ひとまずは、拾ってくれてありがとうを貴方へ
女性の声
遠い遠い宇宙の果てか
はたまた、遠い遠い時間の果てか
分かりませんけどね!
受取人
言語同じだし、日本人コロニーは数が限られてるけど、それでも結構離れてた気がするけどなぁ…
ここはベンチャー企業が多く存在しているコロニーである
食べ物大好き日本人は、宇宙より地球の新鮮な食べ物を選んだのでコロニー数が少なく、一番近いコロニーとここでも、漂うスピードで言えば年単位かかる気がする
女性の声
あ、でも遠い宇宙の果なら言葉通じなくない…?本末転倒では…?
え、新作は地球の言語なら自動翻訳機能付き?なんでそっちじゃないの!?え?予算不足!?そんな…あんまりだ…
受取人
ははっ…
何時なのかも何処なのかも分からないが、ボトルに詰め込まれていた賑やかな会話に思わず笑みが溢れる
女性の声
んんん
んー…はぁ、全然締まらないな…こう、かっこいいミステリアスな感じにしようと思ってたんだけどなぁ…なんでこううまく行かないのかな?
女性の声
んーじゃぁ、これを聞いている見知らぬ貴方が私の言葉がわかりますように
受取人
ああ、わかるとも
ボトルを持っていない方の手で、机を軽くタップしてネットを開く
女性の声
実は、特に何か貴方に伝えたい事があるわけでは無いのです
でも、凄く素敵な事だとは思いませんか?
女性の声
私は、このボトルに蓋をしてしまえば、その先がどうなるのかなんて一切わからないのです
もしかしたら、この音声は聞かれる事なんてないかも!という不安もあるんですよ?
受取人
でも、きちんと届いたよ
女性の声
でも、これを聞かれているということは届いたんですね
受取人
うん
女性の声
え?もうそろそろ時間?
えー、もうそろそろ収録限界時間だそうですよ、では最後に一言
女性の声
改めて、拾ってくれてありがとう見知らぬ貴方
それじゃぁ、さようなら!
その言葉が終われば、ボトルからは何も音はしなくなった
インターネットが導いた情報では、自動翻訳機能がついていないボトルメッセージの最後の型が出たのは50年前と出ていた
受取人
50年前の手紙かぁ…
50年という時間を宇宙で漂ったこのボトルは、その内にしまっていた声を届けきったのだ
受取人
ん?
ボトルメッセージの検索結果をスクロールしていたその指はあるところで止まる
受取人
そうだなぁ…せっかく出しこれぐらいなら…
そう独り言を言いながら、俺はそこに書いてあったボタンを押す
そしてそれから数日後
受取人
これが、いわゆる旧式ボトルメッセージ…の最新版
つまり、俺が拾ったあのボトルメッセージの型である
受取人
まぁ、高かったけどな…俺の1ヶ月の給料の4分の1ぐらい持っていきやがった
自動翻訳機能がついてないその欠陥品の説明書をマジマジと読んだあと、ふぅーと息を吐いてそのボトルに向き合い、その口に話しかける
受取人
あー、テストテスト

いきなり話し出すからびっくりするよな?俺もそうなったからよーくわかるわ
安心しろ、ただの発音練習だったからな
受取人
改めて、はじめまして遠い遠い何処かでこれを聞いている見知らぬ君へ、特にこれといった話はないんだけど、暇ならこの独り言を聞いてくれると嬉しいかな?