プールサイドの下で草むしりをしていると、
亜莉朱ちゃんが倉庫から手袋を持ってきて、
私の分まで手渡してくれた。
やっぱり、亜莉朱ちゃんは、
お姉さん的存在で優しいな。
*
黙々と草むしりを続けること数十分。
ずっと同じ体制での作業に、
そろそろ腰が痛みを感じてきた頃。
いいタイミングで
亜莉朱ちゃんから声がかかり、
作業をストップさせた。
立ち上がって後ろを見れば、
雑草の袋はパンパンにふくらんでいた。
もう17時近い時刻になるけれど、
空はまだ午後のように明るい。
日が長くなったなぁ、と
夏の気配を感じながら、
亜莉朱ちゃんとプールサイドまで
様子を見に行く。
さっきの様子だと、
ニ人ともモメてる感じだったけど、
ちゃんと仲良く掃除してるかな。
少し心配に思いながら
プールサイドを歩いていくと、
遠くからでも分かるくらいに、
楽しそうな声が聞こえてきた。
亜莉朱ちゃんは、あきれ顔で二人を見つめている。
でも良かった、なごやかな雰囲気で。
どうせなら、仲良く掃除してもらいたいもんね。
あんなに不気味な色に染まっていた水は、
きれいに透き通ったマリンブルーになっている。
腕まくりしていた袖を元に戻しながら、
涼しい表情で淡々と話す俊。
3人で声をハモらせた。
すっかり二人ともガッカリ気味。
若干、私も肩を落としているかもしれない。
時間を使ってまで、プール掃除をしたのだから。
でも俊だけは、文句もこぼさず
なぜか冷静なままだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!