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第111話

愛おしい君とクリスマス【俊side】
581
2021/12/05 12:00
山本恵里香
山本恵里香
ねぇねぇ、
これからどこに行くの??
オレンジ色にライトアップされた街路樹を、
手をつないで歩いていると、
ふいに恵里香に聞かれる。
渡辺俊
渡辺俊
んー、それは着くまでひみつ。
僕は笑って答えたあと、ふたたび前を向く。
山本恵里香
山本恵里香
えー!!そんな風に言われちゃったら
ますます気になるっ
渡辺俊
渡辺俊
ふ、楽しみにしてて
今日は、どうしても
連れて行きたかった場所があった。


そこはとなり街なんだけど、
恵里香の喜ぶ顔が見たくて、
できればサプライズで驚かせたい。


僕は胸をはずませながら歩いた。


その途中、
恵里香のほうを無遠慮に見つめていく
若い男たちが目につく。


話すチャンスを作るためか、
わざと肩にぶつかろうと
近寄ってくる男もいた。


そのたび僕は、恵里香を自分のほうに
ぐいっと引き寄せ、睨みつけながら
思いっきり威嚇いかくした。
山本恵里香
山本恵里香
わぁー俊みて!キレイだねっ
そんなことには気づかず、
となりの恵里香はクリスマス仕様の
ショーインドウを楽しそうに見つめている。
渡辺俊
渡辺俊
そうだね。
僕からしたら、恵里香のほうが
断然きれいなんだけど。

そんなことを思いながらしばらく歩いて、
目的地にたどり着くと、恵里香がぱぁっと
笑顔を輝かせてうっとりしたように前を見つめた。
山本恵里香
山本恵里香
わっ!!大きい……キレイ!!
僕が見せたかったのは、噴水広場に立っている
大きなクリスマスツリーだ。


今日が誰よりも楽しみだった。


恵里香のこの喜ぶ笑顔が見たくて、
この日のデートのために
何日も前から計画を立てていた。


自分のほうに恵里香を引き寄せて、
近くで見つめ合う。
山本恵里香
山本恵里香
わわ、俊!!
周りの人に見られちゃうよ!?
そんな僕に恵里香が
あわてたような反応で離れようとするから、
抱きしめる手の力をぎゅっと強めた。
渡辺俊
渡辺俊
だーめ、離れちゃ。
まだ抱きしめ足りてないんだから僕。
山本恵里香
山本恵里香
で、でも……
渡辺俊
渡辺俊
みんなツリーに夢中で
こっちには気づかないよ。
山本恵里香
山本恵里香
そ、そうかな……
渡辺俊
渡辺俊
そうだって。
今日までどれだけ恵里香のこと、
我慢してきたか。
渡辺俊
渡辺俊
我慢してきた分、
今日は甘やかしてよ。
山本恵里香
山本恵里香
……っ、
恵里香のほっぺたに手をそえて、
唇をゆっくりと重ねる。


香りつきのリップを恵里香はつけているのか、
かすかに甘いイチゴの味がした。


唇を離して、こつんとおでこをくっつけ合わせる。
渡辺俊
渡辺俊
恵里香、好きだよ。
来年もまた2人で
クリスマスツリー見ようね。
山本恵里香
山本恵里香
うん!!私も俊が大好きだよっ
世界で1番

僕の目に映る恵里香の笑顔は、
イルミネーションの光にも負けないくらい
キラキラとしていて、何秒もの間見とれていた。


いくら愛しても足りない、
今日もまた僕は恵里香だけに溺れていく。


恵里香の体温が僕の冷えた体を
すぐに甘くとかしてくれるから、
苦手な冬も悪くない。


そう思える、とくべつな今日だ──…

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