思わず、自分の膝を見てうつむいてしまう。
分かりやすかったかな……。
優しくて、その気持ちに胸が苦しくなる。
でも言えない……。
嫉妬なんて。
亜莉朱ちゃんの優しさに、
涙がポロポロとこぼれ落ちていく。
そんな私に、亜莉朱ちゃんは
落ちつかせるように背中をさすってくれる。
あれから5分くらい泣き続けたのかな。
もうすっかり涙もとまった。
本当にいい人に出会えたな……。
だから私も。
言わなきゃ、本当のこと。
思いきって話すと、
亜莉朱ちゃんがムッと眉をよせていく。
あ、れ……。
もしかして怒ってくれてる??
ハァ……なさけないな自分。
きっと、独占欲強いなんて思われちゃったかな……。
そう心配していると、
亜莉朱ちゃんがベンチから腰をあげる。
そしてボクシングを始めた亜莉朱ちゃん。
予想外の反応で、少しだけモヤモヤが
楽になったような気がした。
*
中庭から教室に戻ってきて、
重い足どりで机に座った今。
もちろん。
後ろからは、ものすごい視線を感じる……。
もしかして、亜莉朱ちゃん。
気を使ってくれてるのかな……。
いつの間にか横に立った俊に声をかけられる。
その表情は、笑顔もなく目の奥が少し怖い。
俊に腕をそのまま引っ張られて教室を出ると、
連れて来られたのは、誰も使ってない空き教室。
使われてないから、ホコリがすごい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!