授業が終わるチャイムが鳴って、
俊がイスから立ち上がる。
私もイスから立ち上がろうとすると、
俊は当たり前のように
手をスッとさし出してくれた。
優しい心づかいに
胸の奥がきゅんと鳴りながら、
目の前にある手を笑顔でつかむ。
保健室から出て、廊下を歩きながら、
教室に向かっている途中
私があやまると、
俊は優しく笑いながら
気を使ってくれる。
でも、本当は体育がしたかったはずだ。
それなのに私ったら、
ボールなんかにつまずいて、
男子の好きな体育を中断させるなんて。
彼女として情けない……。
足元に視線を落としていると、
となりの俊は
心から安心しているような表情で、
愛しげに口元をゆるめる。
そんな俊に、
気づいたら体が動いていて、
広い胸に思いっきり飛びこむ。
急にいきおいよく抱きつく私に、
俊は驚いて
少しだけ体をフラつかせる。
だけど、すぐに両手で
ぎゅっと抱きしめ返すと、
耳元で甘くささやいた。
*
教室に戻ると、亜莉朱ちゃんが
すぐにかけ寄ってきてくれる。
心配しててくれたんだ、
優しいなぁ……。
私のとなりの席に、佐々木くんが
座っていることに気づいて、
目を大きく見開かせる。
席替え……。
私が申し訳ない気持ちであやまると、
亜莉朱ちゃんが豪快に笑いながら
佐々木くんの背中をばしばし叩いた。
後ろの俊ばっかりに意識がいってたから、
今日までとなりの席は
ぜんぜん気にしたことがなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。