季節は6月中旬。
クラスではプールの授業が始まりました。
プールは仕切りで
男女別々になっての授業だけど、
少しのすき間からは見える。
だからこっそり、俊の……。
亜莉朱ちゃんの鋭い指摘に、
ぎくりとなる。
で、でもでもっ!!
爽やかな姿を見たいと思うのは、
誰にでも一度あること……じゃないですかっ!?
それとも私って……変!?
ロッカーに置いていた
水着の入れ物を取って、教室を出る。
あれから、亜莉朱ちゃんとも
ぐっと距離が縮まり。
親友みたいに仲良くなった。
更衣室に入ってから間もないのに、
亜莉朱ちゃんってば、
いつの間にか水着になってる!?
でも水着になるのは、少し恥ずかしいなぁ……。
高校生にもなれば、ほとんどの女子は
大人っぽい体つきになる。
私、大丈夫かな……。
*
プールサイドで俊を探してみたけれど、
なかなか見つからない。
もしかしたら
女のコたちに見つからないように、
警戒してかくれてるのかも。
指さす亜莉朱ちゃんの視線を追うと、
男子とじゃれ合ってる俊の姿が目に入って、
心臓がドクンと大きい音を立てる。
いつもとは違うカッコ良さに、
また惚れちゃいそうだ……。
女のコが、そんなこと言っちゃダメーっ!!
でもたしかに、俊の体は男らしい感じで
細いのに程よい筋肉がついている。
爽やかな笑顔に、
あの姿は反則すぎませんか……っ。
焼きつける太陽なんかよりもまぶしい。
そう思ってプールサイドから、
移動しようとした時だった。
男子側のプールサイドから
にぎやかな声が聞こえてきて、
気になってふり返ると
女のコ2人が、
俊を囲んでいるのが見えた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。