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第35話

夏まっさかりな季節は嫉妬日和

俊が出て行ったドアから視線をそらせず、
ずっと立ちつくしていると、
後ろで黒瀬くんが申し訳なさそうに
ぽつりと声をもらした。

黒瀬歩
黒瀬歩
……ごめん、
俺がよけいなことしたせいで

そうあやまる声はひどく沈んでいて、
私はハッとなりながら、
黒瀬くんの方にふり返って首を大きくふった。

山本恵里香
山本恵里香
そんな、あやまらないで……
黒瀬くん……。

黒瀬くんは、私のこと心配して
言ってくれたんでしょ……??
黒瀬歩
黒瀬歩
いや、ぜんぶ俺が悪いんだ……
恵理香ちゃんの気持ちも考えずに
迫ったりして
山本恵里香
山本恵里香
(黒瀬くん……)

目を伏せながら、苦しそうに笑う黒瀬くん。

その無理した笑顔が、あまりにも切なくて、
胸の奥がきゅっと痛くなった。

私……
皆のこと傷つけてばっかだ……。

黒瀬歩
黒瀬歩
急に告白しても困らせるだけって
分かってはいたんだけど……
黒瀬歩
黒瀬歩
恵理香ちゃんの無理してる顔見たら
どうしても言わずにいられなくなって
それで……本当にごめん

逆にツラくさせちゃったよね……
山本恵里香
山本恵里香
そんなことないよ、黒瀬くん……
心配してくれて嬉しかったから
黒瀬歩
黒瀬歩
だめだよ、恵理香ちゃん……
そんなこと言われたら
俺単純だから期待しそうになる

悲しげに笑う黒瀬くんに、
何も言えなくなる。

黒瀬歩
黒瀬歩
……ごめんね、困らせてばっかで

でも、俺が本気で好きだってことだけは
恵理香ちゃんにちゃんと知っててほしい
黒瀬歩
黒瀬歩
答えはゆっくりでいいから
考えてみてくれないかな?
山本恵里香
山本恵里香
……っ、
黒瀬歩
黒瀬歩
てことで、
遅くまで長引かせちゃって
ごめんね……

あとは俺がカギやっとくから、
恵里香ちゃんは
先に帰ってて大丈夫だよ

はい、と黒瀬くんが
いつもの優しい笑みを向けて、
テーブルに置いていた
私のスクールバッグを手渡してくれる。

山本恵里香
山本恵里香
あ、ありがとう……黒瀬くん
じゃ……じゃあ、あと……
お願いします
黒瀬歩
黒瀬歩
うん、まかせて

さっきの重たい空気から切りかえるように、
明るくおちゃめにウインクを飛ばす黒瀬くんに、
私は甘えて、ぺこっと頭を下げてから図書室を出た。


廊下の窓に目を向けると、
くもった私の心とは対照的に、
美しい夕やけ雲が空を流れていた。


ぼーっとしながら
駅のホームまで向かい、

家に着いてからは、
自分の部屋に直行するなり、
制服も着替えずに、

そのままベッドで
朝まで寝落ちしてしまった。
そして翌日。

たくさん眠れたから、
いつもより早い目覚めだった。


その分、シャワーを浴びたり、
制服のシワもきれいに整えたりと、
用意にかなり余裕があって
よかったんだけど……


問題は、俊と同じ駅で電車を待つ今。

ものすごく気まずい雰囲気が流れていて、
居心地が悪くて仕方ない……。