火曜日の朝。
今日もまぶしいほどの青い空が広がる。
駅のホームのベンチで待つ間、
亜莉朱ちゃんから送られてきた
文化祭の写真をながめていた。
楽しかったなぁー!!
去年の文化祭よりも、もっと。
大好きな俊がいるだけで、何もかもが楽しくって……
彼女になれた私はほんとうに幸せ者だなって思う。
俊といると、世界が明るくなって。
好きなことがどんどん増えていくし。
何気ない毎日が幸せに映る。
心が押しつぶされそうなときも、
がんばろうってまた強くなれて。
俊に出会って、俊に愛をもらって、
私の世界は大きく変わった。
ひとりじゃできなかったことも、
好きな誰かと一緒だと
こんなに乗りこえられるんだって。
恋をしていろんなことを学んだ。
経験してきたことぜんぶ、大切な思い出だ。
俊がつらいときは私が寄りそって、
私がつらいときは俊が寄りそう。
そんな互いに支え合える関係で、
これから先もいたいな。
気をつかって二人にしてくれた亜莉朱ちゃんに、
ちゃんとお礼しとかなきゃ!!
もちろん、会ってからもお礼は伝えたい。
文字を打とうとした、その時。
すぐ耳元に俊の声がして、
思わず片手で持っていたスマホが膝に落ちた。
し、心臓に悪すぎる……!!
胸のあたりを手でさすりながら、
俊のほうに視線を向ける。
あれ??
今日の俊、なんだか
いつもと違う雰囲気に感じる。
そう思っていたら、紺のパーカーを
制服の上から羽織っていることに気づいた。
ふむふむ、俊のお母さんが選んだパーカー。
お母さんのセンスはおしゃれっと……。
そういえば、俊のお母さんってどんな人なんだろう。
初めて今日、俊の口から
お母さんのことを聞いた気がする!!
気になるなぁ……。
私が彼女で受け入れてもらえるかな?!
地味な彼女お断りだったりして……っ?!
だ、だよねー……。
そりゃあ普通のお母さんだよね。
途中で俊におどろいちゃったから、
まだ送れてないんだけどね。
怖い……!!
どんどん険しい表情になっていく俊が、
とんでもなく恐ろしいよー……。
最初は人気者の王子様の彼女になっていいのか、
不安だった。プレッシャーも多かった。
けど今は、あの答えでよかったって思えるんだ。
告白された時の私よりもはるかに自信がついたから。
好きな人の愛で、こんなに強く変われるんだ。
信じられる人がいる、
それだけでこんなに心強いんだって。
だからね、今はもう怖くない。
この先また困難な壁にぶつかったとしても、
俊となら乗りこえられる。そう思える。
今までも乗りこえてきたんだもん。
けど、となりの王子様は今日も変わらない。
あいかわらずの嫉妬日和。
──でもね、そんな君も、
私は大好きでいとおしくてたまらない。
この日常が最高に幸せ、だと。
そう思う毎日だ──…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!