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第22話

お姫さまだっこ

結局お姫さまだっこされた状態で、
保健室の前まで連れてこられると、
俊が片手でドアを器用に開けていく。


その姿に、胸がドクンと高鳴る。


……体つきは細いけど、
腕の力はやっぱり男の子なんだ。


中に入ると、先生の姿はなかった。

渡辺俊
渡辺俊
とりあえず降ろすよ。
山本恵里香
山本恵里香
うん、ありがとう!
運んできてくれて……

体をそっと長イスに降ろされる。


……それにしても、

保健室にふたりっきりって、
なんだか緊張しちゃうな。
渡辺俊
渡辺俊
どこだろ……シップ
シップを探してくれている
俊の横顔にふと目がいく。

一つ一つのパーツが完璧に整っていて、
どこを見てもカッコイイの言葉しか出てこない。

来る途中にすれ違った女のコたちも、
女子
女子
いいなぁ、渡辺くんに
お姫さまだっこされるとか
女子
女子
アタシもして欲しいっ

なんて、目をハートにさせながら
うっとり口にしていたっけ。

さすがは学園1のモテ王子。

俊が褒められるのは嬉しい半面、
彼女としてはモヤっともしちゃうけれど……。
渡辺俊
渡辺俊
腕出して。
山本恵里香
山本恵里香
貼ってくれるのー??

となりに腰かける俊に言われ、
袖を半分だけまくり、腕を前にさしだす。

あの後、クラスから借りる時間もなくて、
俊のジャージを貸してもらって、
急きょ私だけ長袖で参加したんだよね。

渡辺俊
渡辺俊
細っ。ちゃんと食べてんの?
山本恵里香
山本恵里香
いやいやっ、俊の方が細いもん

私の手首をつかみながら、
俊がいきなり驚いた顔をする。

でもそう言う俊だって、
透き通った腕をしていて、
私よりも細くて数倍キレイだ。
渡辺俊
渡辺俊
真っ赤……痛そう。
山本恵里香
山本恵里香
尻もちついたとき、
とっさに腕を床につけちゃったから
それでかな

その時に、きっと擦りむいちゃったのかも。

赤く腫れてはいるけど、
痛みはさっきよりも引いて
だいぶ楽だったりする。

床に強打したときの衝撃の方が、
全身に響いてツラかったからなぁ……。

渡辺俊
渡辺俊
ごめんね……僕がちゃんと見ていたら
山本恵里香
山本恵里香
ううん、私の不注意だから
大丈夫だよ


申し訳なさそうに眉をさげる俊に、
私は笑って言葉を返す。

それよりも、俊が
“誰かの借りてこよっか”

そう言ってくれただけで、
本当に心が救われたんだ。

渡辺俊
渡辺俊
あのさ……
山本恵里香
山本恵里香
んっ??
渡辺俊
渡辺俊
ジャージ無くなったんでしょ。
山本恵里香
山本恵里香
っ……う、うん……

気まずい顔でうなずくと
俊がハァと深いため息をつく。

渡辺俊
渡辺俊
なんで恵里香に嫌がらせするのかな。
僕に直接すればいいのに。
山本恵里香
山本恵里香
俊、私は大丈夫だから……

誰も、王子のことなんて嫌ったりしない。

でも、そのとなりにいる“お姫さま”は
いつだってターゲット。


“お姫さま”って表すぐらい、
私はけして美しくないけど。

王子様のとなりに並べば、
女のコたちから敵意を向けられる。


だから王子様とずっと一緒にいるには、

それに耐えなきゃいけない、
強い心と覚悟が必要になってくるんだって。

再度つよく思い知らされた。

渡辺俊
渡辺俊
今度嫌がらせ受けたら、ちゃんと僕に言うんだよ?
山本恵里香
山本恵里香
うん……、ありがとう
渡辺俊
渡辺俊
こんな風に我慢しちゃ、絶対ダメだからね。
山本恵里香
山本恵里香
う、ん……っ

少し涙ぐみながら答える私に、
俊は優しく目を細めながら
頭に手を置いてなでてくれる。


どんな痛みどめよりも、
俊の温かな手が一瞬で一番に
心をやわらがせてくれる気がした。


となりの王子様は今日も優しい、
私にはもったいないくらいに。