俊が嬉しそうな声で話す。
少しおどろいて見上げる私に対して、
俊はどこか焦ったような顔を見せた。
そしてみるみると赤くそまる耳に、
こらえきれず笑ってしまった。
バツが悪そうに目を伏せる俊。
だって、可愛すぎる。
クールな俊が女のコみたいに信じるんだなって。
意外なギャップにハートがくすぐられてしまう。
顔をゆるませながら俊を見続けていると、
視線を窓にぷいっとそらされる。
ふふ、これも俊なりの照れ隠しなのかな。
きっと。
胸の前で二つ手をむすんで、
花火にお願いごと。
数秒ほど目を閉じていると、
俊の声が降ってくる。
こんなのただのウワサだから、
無意味な願かけなことかもしれないけど。
それでも、信じたい。
叶うって。
抱きしめている手が、ぎゅっと強められる。
心が幸せな気持ちにみたされていると、
ふいに夜空にハート型の花火が上がった。
これがウワサの花火だって、
ついはしゃぎながら俊にふり返って教えれば、
顔が近づいて唇を奪われた。
突然のキスに固まっていると、くすりと笑われる。
いとしげに見つめ合うと、
髪に手を差し入れられる。
そして花火の光に照らされながら、
また唇を重ねた。
願いをこめるかのように、
何度も甘くて優しいキスをする。
恋のジンクスに頼らなくても
たくさんの愛を感じながら、
2人だけのとくべつな時間を過ごした──…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!