きっと彼女に相応しくない、
認められてないんだよね。
それは痛いほど感じてた。
付き合い始めてから、
今まで仲良く話していた女のコにも
分かりやすく避けられて。
やっぱりこうなっちゃうんだなって、
正直悲しくてショックだった……けど。
それでも亜莉朱ちゃんだけは
“よろしくね”
そう笑って声をかけてくれたんだ。
言われたときは驚きと喜びが交差して、
あぁ、私と関わってくれるんだって
嬉しかった。
席が一緒になってからは、
毎日挨拶してくれることも増えて、
本当に感謝の気持ちでいっぱいなんだ。
勉強だって、運動だって、
見た目だって。
唯一、出来ることは……
頭をなでながらの『お願いします』は
……反則ですっ!!
*
いつもは電車を降りたあと、
家まで送ってくれるんだけど、
今日はコンビニに用事があるから。
俊とはここでお別れだ。
俊はさびしそうな顔を一瞬浮かべるけど、
見えなくなる間際まで手を振ってくれた。
駅に着いた頃には、
空がネイビーに染まりかかって、
道が見えづらなくなっていた。
真っ暗になる前に、ささっと買って帰ろう。
*
近くのコンビニに入って、私のお目当ては。
最近痩せちゃってる感じだったから、
それでシロちゃんのご飯を買いたくて。
見てると、心配になっちゃうんだよね。
本当なら拾ってあげたいとこだけど、
お母さんが猫アレルギーだからなぁ……。
でもせめて、これくらいのことはしてあげたい。
明日会えたらあげたいな。
内緒で買ったから、俊もびっくりするかなー!?
えへへ、早く明日にならないかなぁ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!