私たちは付き合っているわけではないけど、
お互いのことが気になっている。
だけど、このことは2人だけの秘密だった。
春ちゃんは本当にシャイで、考えてることを言葉にしない子で、だから、
私が最初に気になる人を言ったから、
春ちゃんも私って言ってくれただけなのかな。
とかこのまま気になるだけで終わるのかな、
だけど、言ってくれるよね?
と思っていたけれど、
一向に春ちゃんからは何も言ってこなかった。
こんな風に確認したりもしてたよね。
学校では恥ずかしくて、全く話せなかった。
背の順で並ぶ時に隣になって、ドキドキしたり、
目があって、すぐそらしたり、
付き合っていないけど、お互い両思いだと知っている関係は、とっても甘酸っぱかった。
その関係が先にもどかしくなったのは
私だった。
今でも覚えてるこのやり取りをしたのは
私が習い事から帰る車の中だった。
私から言うのか、と思って、
私は勇気を出した。
生まれて初めて言った言葉だった。
だけどやっぱり、島崎くんはいつも何を考えてるのかわからなかった。
日曜日の朝、目が覚めると、春ちゃんからそうメールが来てた。
初めての彼氏だった。
私にとっても、春ちゃんにとっても、
お互いが初めての恋人だった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。