美術室にノートを置いて私は美術室を後にした。
あれ、そういえばここの階段ってどこにつながっているんだろう。屋上?
なんとなく、いつもは使わない階段が気になり、
暇になった私はなんとなく階段を駆け足で登った。
階段を登りきった狭い踊り場には春ちゃんがいた。
ここはこの踊り場で行き止まりになっていて、奥の扉を開けると屋上に続いているみたいだ。
驚きで私は下を向いたまま。
春ちゃんも目を泳がせて髪をいじっている。
あ、そうだ。
あーだめだ恥ずかしい、、、
手紙交換しよ?だなんて恥ずかしすぎて言い出せない。
でもここは私が頑張らないといつまでも焦れったいままだ。頑張れ自分。
きっと私の顔は真っ赤っかだ。
こうして私たちは、毎月一回手紙交換をすることにした。
誰もいない踊り場で、いつもならうるさいくらいに感じる吹奏楽部の音がなんだか濁って耳に入る。
こそばゆくて、夏が来る前の生暖かいせいか、
私の頬はじんわり火照っていて、
横目で見た春ちゃんの頬も少し赤く見えた。
不器用だけど、歯痒いけど、今目の前にいる彼の事が、私はとっても愛おしくて、大切で、大好きだ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!