第16話

蟠り
199
2020/03/24 14:20
あれから数日後
未だに薬は見つかっていない
長門響
長門響
(まあ心苦しいけど大胆な行動に出られるよりかはよっぽどマシか)
新門紅丸
新門紅丸
……響
長門響
長門響
新門紅丸
新門紅丸
お前、俺になんか隠してねェか
長門響
長門響
…何を隠すのかしら
新門紅丸
新門紅丸
…なんでもねェ
長門響
長門響
そう
長門響
長門響
ねぇ
新門紅丸
新門紅丸
なんだ
長門響
長門響
私が突然消えたら、どうする?
新門紅丸
新門紅丸
…どういう意味だ
長門響
長門響
突然死ってやつよ
ふと、浮かんだ疑問。

『この人、私がどっか行ったらどうするんだろう』

素朴に気になったのだ。
頭があまり働かなくなる、今は自分が何を言っているのかさえ分からない。
新門紅丸
新門紅丸
テメェ、不吉な事言うんじゃねェ
長門響
長門響
…せめて、答えてくれればいいのに
そんな言葉は紅丸に聞こえる筈無かった。
長門響
長門響
……そろそろ帰るわ…、じゃあね
新門紅丸
新門紅丸
ア?早くねェか?
長門響
長門響
そうかしら、まあたまには良いじゃない
新門紅丸
新門紅丸
…テメェ、やっぱり何か隠してんだろ
長門響
長門響
何も隠してないわよ
新門紅丸
新門紅丸
嘘つけ、テメェの事なんかちっせぇ頃から知ってら、分かんねェ筈ねェだろ
長門響
長門響
…何か隠してても、貴方には一切関係性はないから安心してちょうだいね
そう言って、待てと引き留める声をも無視してその場を去った。
長門響
長門響
(本当、心苦しいわね)



◆◆◆◆◆
長門響
長門響
失礼します
岬鋼
岬鋼
おっ、来たねー
岬鋼
岬鋼
薬は効いてる?
長門響
長門響
まあ、なんとか
岬鋼
岬鋼
彼氏さんにバレてない?
長門響
長門響
いや、多分何かしら気づいてます、勘だけは昔からいい人です
岬鋼
岬鋼
早めに言った方がいいからね
長門響
長門響
うーん…。
岬鋼
岬鋼
ま、取りあえず薬は今の量でいけそうだね?
長門響
長門響
まあ、はい。
岬鋼
岬鋼
了解。今日はこれでおしまい。また来週ね
長門響
長門響
ありがとうございましt…
扉を開け、礼をし、ありがとうございましたと途中まで言った瞬間



「オイ」
新門紅丸
新門紅丸
テメェ、こんなところで何してやがる
長門響
長門響
……派手に逃げる!!
新門紅丸
新門紅丸
逃がすか
岬鋼
岬鋼
んー、病院内は走らないでねー
たったったっと軽快に走る。
長門響
長門響
(体が異様に軽い…)
タンッと足に力をいれ、電信柱の上に乗ると
新門紅丸
新門紅丸
待てっつってんだろ
下で紅丸の声が轟く
しかし、そんなことはお構い無しといわんばかりに響はひたすら逃げる

息切れが起きない。
自分の体に違和感を覚えたため、一度地上に降り、狭い裏路地を歩く。
だがガシッと腕を捕まれてしまった。
新門紅丸
新門紅丸
ッテメェ人の話聞け馬鹿!!💢
長門響
長門響
ふぇえ、ごめんなさいぃ…
唐突に怒鳴られたからか、頭を抱え屈みこむ
新門紅丸
新門紅丸
おっ、おい、そこまでしなくていい
長門響
長門響
…。
しかも全て演技である
新門紅丸
新門紅丸
帰ったら全部話せよ
長門響
長門響
ただの風邪…。
新門紅丸
新門紅丸
テメェあそこどこの科だったか分かっていってんのか
ガッツリ心療内科である
長門響
長門響
一代目が紹介したんだもの、彼処の先生本条専属だったみたいだし
新門紅丸
新門紅丸
そんな事聞くんじゃねェよ
長門響
長門響
…。
◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆─◆
新門紅丸
新門紅丸
で、さっさと話しやがれってんだ
長門響
長門響
…話したくない…。
新門紅丸
新門紅丸
何片意地張ってんだ、話せ
長門響
長門響
私の勝手でしょう?話してどうなるわけでもございませんしね…。
新門紅丸
新門紅丸
テメェ…💢
長門響
長門響
何よ、兎に角話すことはないから
新門紅丸
新門紅丸
…。
その日から二人が言葉を交わす事は殆ど無くなった
長門響
長門響
(強く言い過ぎたかな…)
なんて考えたりもするが、やはり謝りに行くのは気が滅入る。
長門響
長門響
はぁ、どうしよう…。
その時。
急な吐き気と血の匂いが身体中に回った
長門響
長門響
ごほっごほっ…ごほっごほっ…
血が溢れでる。
誰も助けに来るはずがない
まず、あの喧嘩もどきの蟠りが体に負担をかけたのだろう。
長門響
長門響
(一発っ、死ぬか…。) 
簡単に戻れる、そう思うと血が出ても全然辛くなかった。
だけど、気持ち悪い感覚が響の意識を奪い取るようにぐるぐる回る。
一向に血がおさまらない、このままじゃ確実に死ぬ
どうしようどうしよう、そんな言葉ばかり頭を悩ます、誰か、誰か助けてと思うが、誰も来る筈はなかった。




夕刻
鐘の音が響いている。
血だまりを拭き取り、涙も取っていく。
お風呂に入り、髪を乾かす。
涙痕も一緒に流していってしまう。
お風呂場を出て、服を着替え、脱衣場を出るとそこには
新門紅丸
新門紅丸
やいテメェ
…いつも安心させてくれる、声が聞こえた。





──フリーズ──
長門響
長門響
…………………………………………………んぎゃっ
鼻を塞がれる。
新門紅丸
新門紅丸
聞いてんのか
長門響
長門響
聞いてるわよ…、どうしてここにいるわけ、また扉を破壊したの?
新門紅丸
新門紅丸
そんな事ァどうだっていい、全部言うまで帰らねェからな
長門響
長門響
………これ、根負けって言うのかしら
新門紅丸
新門紅丸
あ"?テメェそんな事言える立場じゃねェ事分かってんだろうな
長門響
長門響
……はい…

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