第2話

#1 名前呼んでよ!
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2018/08/13 13:21
ただいまー
おかえり!にいちゃん!
 部活終わり、7月5日、つまり猛暑、家の前のでかい坂-。鬼畜だ、鬼畜すぎるだろ。でも、弟、晃のおかえり!によって、少しは回復する。
にいちゃん、ご飯!
僕お風呂入ったから兄ちゃん入ってよ、
それからご飯ね!
おう!わかった!
じゃあ入ってくる
 ブラコンみたいになるけど、ほんとにしっかりしていると思う。俺の家は父さんと弟の晃と俺の3人家族。母さんは俺が3歳くらいの時にがんで死んだ。あんまり覚えていないから、ちょっと前に父さんに教えてもらった。

ご飯も、中学入る前までは父さんの妹、朱莉(アカリ)ちゃんに作ってもらっていたけど、中学に入ってからは俺が作るようになった。それから、あんまり朱莉ちゃんも来なくなった(週1で来るけど)。


風呂上がった直後くらいに、玄関のインターホンがなった。そして、ドア越しに
???
ごめんくださーい!
はーい!
そう言って、玄関のドアを開けてみると
え?
花恋
え?
2人の声が重なって、お互い数秒の沈黙が流れた。
花恋
あっ!えっと、
ここって天野くん家だったんだ!
私、隣の家に引っ越してきたんだけど、
これ!よろしくお願いします!ってことで!
お、おう!
花恋
んじゃ、よろしくね!
あ、じゃあな!
 短かったはずが、その時間だけ、すごく騒がしい気がした。
兄ちゃん!誰だった?
あ、えとー、隣の引っ越してきた人だった。
聞いてないんだけど……
あ!僕知ってる!
今日帰ってきた時に女の人が家の中に荷物運んでたもん
 あ、晃は知ってたんだな。父さん帰ってきたら聞いてみよう。
ただいまー
 夕食を食べている時に、父さんが帰ってきた。
おかえり!お父さん!
あ、光たちは知ってる?
隣の家に光と同じくらいの歳の子が引っ越してきたんだ。
双子らしい!すげーよなぁー
あ、そういえばさっきなんか貰った。
そこにあるよ
双子か……、やっぱり、似てんのかな?とか考えてしまう。明日、夏希でも連れて見に行こう。
いってきます
 今日は朝練があるから、早めに家を出た。
家の前の坂を下った時にちょうど夏希が家から出てきた。
夏希
光!はよー!!
夏希、おはよー
夏希
なんだよ、朝から暗いなぁ
いや、眠いだろ!
夏希
そういえばさ、昨日の転校生!
ほら、足立さんだっけ?
元気いいよなー
それ、昨日も聞いたよ…
夏希
あーゆー子光に合いそう!
はぁ!?
ついこの前そんな話をしてきて、懲りないなと思う。まず、好きなやつできたこともないやつに、そういうこというのは痛いだろ……。


色々話しているうちに学校に着いて、俺たちは朝練にいった。


朝練も終わり、HRも終わり、今は1時限目。英語なんか全然できないから話も聞いてない。
花恋
ねぇ!天野くん!
 いきなり、隣の席の足立が俺の机をトントンと叩きながら話しかけてきた。
ん?なに?
花恋
天野くんって天野光だったっけな?
そうだけど(笑)
花恋
あのさー、なんて呼べばいい?
え、別になんでもいいよ、
苗字とかで!
 ちょっと、苗字だけでってとこを強調しすぎた。前から、下の名前で呼ばれるのは恥ずかしいと、思ってしまう。なんでかは分からないけど-。
花恋
じゃーあ!光って呼ぶね!
あっ、光くんがいいかな?
はっ?苗字でいいんだけど(笑)
花恋
えー?だめなん?
あっ、もしかしてー、恥ずかしいとか?
あー、分かる!分かるよ!うんうん!
図星をつかれた。というか、聞いといて参考にしてない。なんか、疲れる(笑)
や、もういいよ、光で
花恋
おー!かっこいーね!
じゃあ私のことも花恋って呼んでよ!
え?なんでそうなるの?
実際、名前で呼ぶ女子はいない。いても朱莉ちゃんくらい。しかも、呼び捨てなんてしたことない。無理に決まってる。
花恋
じゃあ、呼んでくれなかったらさっきの
図星だったのばらまいちゃおー!(笑)
はっ!?えっ!?
 嘘だろ、でもまぁ、そのくらいはしてやるか。そうやって、花恋と話しているうちに1時限目が終わった。英語教師が出ていった瞬間、
夏希
なー!光くーん!(笑)
なに?急にくん付けとかちょっとキモチワルイよ(笑)
夏希
ごーめんって!!
ところで、光さー
さっき足立さんと何話してたのー?
 こういう時、どうすればいいんだ。変に言ってもおかしいし、でも本当のこと言ってもなぁ……。そして、出た言葉がこれだ。
いや!別にそれといったことじゃない!
あー、終わった。1番疑われやすい反応をしてしまった。
夏希
えー!まぁ、今は聞かないけど
今度ちゃんと言えよな!
お、おう……
 なぁ、夏希……。
お前、気づいてるんだよな?

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