第11話
十話
俺は____元は孤児だった。
母と父に捨てられ…路地裏で一人で過ごしていた。
ゴミ箱を漁り、食べ物を手に入れ、風呂も入らぬままの毎日。
カビが付いていても食べた。
腹を下しても。
その時の俺は生きる希望が無かった。
絶望しか無かった。
でも、生きるのに必死だった。
死ぬのが怖かった。
そんな、日常を過ごしていると…
突如、アンナが現れた。
そう、優しく問いかけてくれたアンナは天使のように見えた。
おそらく、一目惚れだったのだろう。
それが…その一言が嬉しくて…。
泣きながら…、そう答えた。
メイドらしき人が…
お金持ちなのかな?
……どうせ、家族になったってすぐに捨てられるんだ。
そんなに、俺に家族になって欲しいのかな?
む…
誕生日は…
もう…忘れかけてたな…
俺は…今、7歳と2ヶ月ちょうど。
偶然だ…。
でも、僕と家族になってくれる人と同じ誕生日なのは嬉しい。
嬉しい…親から捨てられて…もう…人の温もりなんて感じる事は無いと思っていた。
だけど、この子の言葉で救われたんだ…。
ありがとう…!
やった…!
家族だ…!
この時は知らなかった…。
養子になった家が…
死刑レベルの脱税をしていた事を_____。
そう…毎日のように聞かされていた。
とても世話になっているから、言われなくともするつもりだった。
だから、この家が貴族と知った時から勉強を頑張った。
もっと、上の地位の人に馬鹿にされないように。
もっと、この家の位が上がるように。
だけど…義父はそんな事を求めては居なかった。
そう告げられた時は、ただただ驚いた。
人を殺す…?
その答えは…もう、分かりきっていた。
と…。
聞くまでにも無かった。
だけど、俺はアンナに…俺の昔の様な思いをして欲しくなかった。
だから…
グシャッ
殺した。
沢山の人々を。
手を汚すのは俺だけで良い。
そう…思っていた。
だが…
アンナ…お前も手を汚していたんだな。
あの試合で分かった…。
俺らの一族は人殺し。
養子だろうが関係ない。
バレると死刑だ。
でも、双子として受け入れてくれたのは本当に嬉しかった。
本来なら、召使いでもまだ良い方だ。
アンナ…!
ああ…昔に戻ったみたいだ。
アンナ様は、少し俯いて
潤んだ瞳で…そう、問いかけた。
違う!ずっと前から好きだった!
最初から出会った時から…!
そんな事…!
俺と一緒だ…。
そんなの…そんなの…
もう…手を汚す事はない。
昔の様には戻れないかもしれない。
だけど、今の俺達はまだチャンスがある。
来世というチャンスが。
俺達の…罪滅ぼしをしに。
犠牲者:アンナ、アラン