黒田から新しい策を与えられた、みやびと信長は、廊下を歩いていた。
と、前方からあなたが来ていた。
かけよって必死そうに言うみやびにあなたは笑いながら謝る。
と、急に「そうですわ!」と手を打つ。
嫌そうな顔をしていたが、二人のキラキラした目に負けて、ため息をついて窓際に座った。
二人が隣に来てから、まず、と話し出す。
役割などを話すと、みやびがそれをメモする。
だが、一段落喋ったあなたの曇った表情を、信長は見た。
あなたは驚いたような、気まずいような顔で信長を見る。
そこまで言って、頭を垂れる。
眉間にシワを寄せて、小さく頷く。
仄かに柔らかい顔であなたが信長のほうを向く。
「信頼」「冷静さ」「判断力」。
ポツリと呟いて、今度は信長の目を見て言った。
そう言うと、立ち上がって元の進行方向へ向かった。
名前を呼ばれ、振り返る。
あなたは迷った。目の前の彼らに、言うかどうか。
自分が今の立場になってから、3人が死んでいる。
一人は病気。
一人は敵方に毒を盛られた。
生死を彷徨った者は数人。
人が争い、血も多少流れる。
その先頭を切ってきた。
大将は兵に背中を預け、兵は大将に首を預ける。
そんな戦場をこいつらは知らない。
そんなもの、知らなくていいのだ。
ただ自分が背負えばそれでいい。
少し微笑んで、また踵を返した。
見物じゃな、と理事長は高らかに笑うのだった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。