第20話

本物の戦
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2022/08/30 04:00
黒田から新しい策を与えられた、みやびと信長は、廊下を歩いていた。

と、前方からあなたが来ていた。
日下部みやび
日下部みやび
あなたさん!
井伊あなた
おぉ みやび
日下部みやび
日下部みやび
ここ数日、女子一人で、心細かったんでございますよ!
かけよって必死そうに言うみやびにあなたは笑いながら謝る。

と、急に「そうですわ!」と手を打つ。
日下部みやび
日下部みやび
あなたさんに、人を束ねるのに大切なことを教えて頂きましょう!
井伊あなた
は?
織田信長
織田信長
おぉなるほど
井伊あなた
納得すんな
嫌そうな顔をしていたが、二人のキラキラした目に負けて、ため息をついて窓際に座った。

二人が隣に来てから、まず、と話し出す。
井伊あなた
ウチの道場は班制だ。大きく分けて4つの班がある。その中で一番先輩が班長になる。まぁ管理官だ。で、私はそれをまとめる、管理長だな
役割などを話すと、みやびがそれをメモする。

だが、一段落喋ったあなたの曇った表情を、信長は見た。
織田信長
織田信長
どうした

あなたは驚いたような、気まずいような顔で信長を見る。
井伊あなた
…ウチも名の通るとこだからな、道場破りはしょっちゅうだ。
だが、そのほうがましなんだよ
日下部みやび
日下部みやび
どういうことでしょう…?
井伊あなた
来るもの拒まず去るもの追わず。なんであろうと受け入れる。それが、嫌がらせであろうとな。

そこまで言って、頭を垂れる。
井伊あなた
…たまに、極たまに、嫌がらせが限界に達することがある。
そのときは、黙っているわけにはいかない。
織田信長
織田信長
…攻めるのか


眉間にシワを寄せて、小さく頷く。

井伊あなた
父さんと一部は残る。途中で誰が来るか分からん。
私は大将に、班は部隊に、班長は隊長に変わる。

仄かに柔らかい顔であなたが信長のほうを向く。
井伊あなた
人を束ねるのに大切なこと、だったな
「信頼」「冷静さ」「判断力」。
ポツリと呟いて、今度は信長の目を見て言った。

井伊あなた
"仲間と共に戦う覚悟"だ
そう言うと、立ち上がって元の進行方向へ向かった。
織田信長
織田信長
あなた
名前を呼ばれ、振り返る。
織田信長
織田信長
俺に、人を束ねる才能があると思うか


あなたは迷った。目の前の彼らに、言うかどうか。


自分が今の立場になってから、3人が死んでいる。


一人は病気。

一人は敵方に毒を盛られた。


生死を彷徨った者は数人。


人が争い、血も多少流れる。

その先頭を切ってきた。


大将は兵に背中を預け、兵は大将に首を預ける。

そんな戦場をこいつらは知らない。
井伊あなた
(いや)

そんなもの、知らなくていいのだ。
井伊あなた
"束ねる才能"は分からない。だが、


ただ自分が背負えばそれでいい。


井伊あなた
無理に束ねようとしなくてもいい。お前のやり方がある
少し微笑んで、また踵を返した。

織田信長
織田信長
俺の、やり方…


別府ノ守与太郎
井伊直虎は直政を"井伊の赤鬼"と呼ばれる武将にまで育て上げた養母。
男であれば今川や武田とも戦え、天下も夢ではないとまで言われた鬼娘でもある
魔村
魔村
旗印戦に参加する気は無さそうですが
別府ノ守与太郎
あぁ…じゃが『本物の戦』を知っておる。彼女やつが天下獲りを始めれば、一大勢力になるのは間違いない。
見物じゃな、と理事長は高らかに笑うのだった。

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