第24話

想う練りきり*💡
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2023/01/09 09:02
傑山宗俊けっさんそうしゅんの朝は早い。

漆喰の壁に木の戸。高い建物に挟まれるように和菓子屋「龍潭堂りょうたんどう」はあった。

師匠から店を受け継ぎ、
この現代社会でもなんとかやっていけている。

今日もお客さんが来る前に、菓子たちをガラスケースに並べなければならない。


一通り菓子が出揃ったところで、カラカラと戸が開く音がした。
こんな時間に来る人物は決まっている。
傑山宗俊
あなた嬢!
井伊あなた
よぉ宗俊
まだ少し暗い店内でもよく分かる凛々しい顔立ち。
薄く浮かんだ笑みは美しい以外の何物でもない。
井伊あなた
その呼び方もやめろよ。もう道場生でもないだろ
傑山宗俊
いやぁ、なかなか抜けません
傑山も、元は井伊道場の道場生。
武芸において優秀であったが、ここの菓子に感銘を受け、先代に弟子入りしたのだ。
井伊あなた
南さんは?
傑山宗俊
あ、奥におります
南渓瑞聞
おぉあなた嬢、お変わりありませんかな
井伊あなた
うん、南さんもそうで良かった
南渓瑞聞
直盛さんは
井伊あなた
元気だよ
いまだに菓子作りを監視してくる先代は、会話をしてまた奥へ引っ込んだ。
傑山宗俊
今日は何を?
井伊あなた
あぁ練りきり、なにがある?
傑山宗俊
そうですね…
左側のガラスケースには、美しい練りきりが置いてあり、月ごとに種類を変える。ここが出来てからの自慢だ。
井伊あなた
じゃあ、雪の華と…
そこまで言うと、考えるように口を結んだ。
井伊あなた
…宗俊
傑山宗俊
はい?
井伊あなた
あれ、作れるか

~~~~~~~~~~~~~~
井伊あなた
煮詰めてんな
黒田官兵衛
黒田官兵衛
あなたか
広場吹き抜けのベンチで新たな策略を巡らせていると、頭上からあなたが声をかけた。
井伊あなた
ん、誕生日
黒田官兵衛
黒田官兵衛
! ふっ…
井伊あなた
なんだ
黒田官兵衛
黒田官兵衛
いや、「井伊の鬼姫」も人を祝うのだな
井伊あなた
…直政か
不機嫌な顔をしたあなたにまた笑いながら、渡された包みを開ける。
黒田官兵衛
黒田官兵衛
、上生菓子か
井伊あなた
あぁ、先々代の頃から贔屓にしてる和菓子屋があってな、
小さな黒い箱にちょこんと居座った綺麗な二つの練りきり。
井伊あなた
作って貰った。お前っぽいやつ
黒田官兵衛
黒田官兵衛
…おい
珍しく仄か輝いていた黒田の目は、すぐに戻った。
黒田官兵衛
黒田官兵衛
おまえ今「俺っぽいもの」と言ったな?
井伊あなた
うん
黒田官兵衛
黒田官兵衛
これ・・もか?

黒田が指差したのは左の練りきり。
右は雪の模様、左は…
井伊あなた
可愛いだろ?うさぎ
黒田官兵衛
黒田官兵衛
井伊あなた
どうした、嫌いか
黒田官兵衛
黒田官兵衛
違う、そういうことじゃない。
勿論黒田が引っ掛かっているのは、「自分がうさぎに似ているのか」ということだ。
井伊あなた
似てるだろ
黒田官兵衛
黒田官兵衛
どこがだ
井伊あなた
お前怒ったとこ うさぎだぞ
黒田官兵衛
黒田官兵衛
なっ…!
そんな風に思われていたのかと結構なショックを受けている黒田に、あなたはさも同然という顔をしている。
井伊あなた
まぁ、味は保証するよ
それだけ言うと、前田と棒術の練習をしに行った。

もう一度手元の練りきりに目を移す。
一応和菓子切が添えられているが、自分をイメージしたものを切り裂くのもどうだろう。

まぁ、貰ったからには食べなければいけない。


黒田官兵衛
黒田官兵衛
…うまい

~~~~~~~~~~~~

今日もにぎやかだったな、と思いながら銀杏高校を後にする黒田。
手には例の練りきりが入っていた包みがある。
黒田官兵衛
黒田官兵衛
ふと視界に入ったのは、白い壁と木の戸の和菓子屋。
自然と足がそちらに向かう。

店に入ると、店主が出てきて注文を聞く。


黒田は、目に止まった白い花を指した。








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