第18話

拳(五)
2,988
2022/08/26 13:50
日下部みやび
日下部みやび

教室の外で、みやびはカードフォンに目線を落とした。

黒田が信長派に協力してくれることになり、情報もくれた。

今川、井伊の他に、竹中と真田も家康派、"裏切り者"らしい。


にらめっこをしていると、教室に黒田が入っていった。


【裏切り者は黒田、そしてまだ他にもいる】

その張り紙を見るなり、ため息をついた。
上杉謙信
上杉謙信
黒田、どういうことなのか説明してもらえないか
伊達政宗
伊達政宗
ここまであからさまな情報が出回ってるんだ。白黒はっきりさせておこう、君が裏切り者かどうか
黒田官兵衛
黒田官兵衛
そうだな、正直に言おう
俺は…裏切り者だ。
皆を欺いていた
伊達政宗
伊達政宗
つまり、君は自分で考えた作戦を私たちにやらせておきながら、井伊を痛めつけたということか
黒田官兵衛
黒田官兵衛
相違ない
伊達が黒田に近づき、拳を振りかぶる。


黒田の顔にそれがぶつかる、というところで、誰かの掌が受け止めた。


伊達政宗
伊達政宗
!?
日下部みやび
日下部みやび
あなたさん!?
井伊あなた
意外と短気か?伊達
伊達政宗
伊達政宗
…あなた、そいつは裏切り者なんだぞ
井伊あなた
その前にクラスメイトだというのは甘いか?

伊達と自分の腕を下ろすと、鼻でため息をつく。
井伊あなた
やっと終わって来てみたら…
悲しいもんだな
伊達政宗
伊達政宗
…人を裏切れば、いつか罰が当たる
井伊あなた
裏切り、罰、ね

あなたがポツリと呟くと、軽い太鼓の音が聞こえた。

織田信長
織田信長
やはり力任せに叩いたとて、良い音色は出んなぁ、バチ・・は加減が難しい
太鼓のバチを持った信長が横を見ると、武田がニヤリと笑う。
伊達政宗
伊達政宗
何が言いたい

伊達に信長に向き合うと、黒田が拳をついた。
黒田官兵衛
黒田官兵衛
本当に申し訳なかった!
返す言葉もない

家康は、早々にPBB作戦を見抜いていた。自分の策を先回りされた。そんな男に、惹かれてしまった。そう悔しそうに俯いて言った。

黒田官兵衛
黒田官兵衛
本当に悔いている!
だが今は、家康に対抗する策は、PBB作戦を置いて他にはない!
作戦を再開してはもらえぬだろうか?この通りだ

黒田は伊達に頭を下げた。
土下座というやつだ。
伊達政宗
伊達政宗
…いずれにせよ、君には外れてもらう
日下部みやび
日下部みやび
え…
伊達政宗
伊達政宗
この先いつ裏切られても、おかしくないからな。君はもう、仲間ではない
黒田官兵衛
黒田官兵衛
…そう思われても仕方がない。
それだけのことをしたんだ
日下部みやび
日下部みやび
お待ちください!
それはおかしいです。黒田くんは改心したと言ってるじゃないですか!
黒田官兵衛
黒田官兵衛
もういいんだ日下部、
今最も重要なのは、PBB作戦を再開することだ。俺のことなど…
日下部みやび
日下部みやび
しかしそれでは!

黒田は断固として受け入れようとしない。

伊達は作戦再開は出来ないと言う始末。


日下部みやび
日下部みやび
私がどうにかします
井伊あなた
みやび、
日下部みやび
日下部みやび
みなさんが、安心して遂行できる作戦を、私が考えます

みやびがそう言い放てば、武田が教室を出ていこうとする。

上杉謙信
上杉謙信
どこへ行くんだ
武田信玄
武田信玄
どこへ行こうと自由だ。
別にこの教室に、大将がいるわけでもない


その後、黒田による美術室でのお説教が始まるのであった。

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