“ っ、 ”
口の中を切ったようでじんわりと血の味が広がる
容赦なく降ってくる掌に耐えながら
この時間が早く過ぎ去ることばかりを願う
「 お前なんかこの世からいなくなればいいんだ! 」
なんでそんな事言うの
私なにかした?
ひどいよ お父さん
「 俺はなぁ…頑張ってるんだよ 」
「 なのに…なのに 」
「 あいつらは…!! 」
そう叫んで
私をまた殴る
「 お前なんて…! 」
そう叫び今度は私の首を掴んだ
なに、するの…
嫌な予感がし冷や汗が背中を伝う
その予感はどうやら的中したようで
だんだんとその手に力が入り私の首を絞める
“ かはっ… ”
苦しい
うまく息が吸えない
こんなことされるの初めてで
私は咄嗟にお父さんの手首を掴む
このままじゃ
死ぬ
嫌だ
死にたくないっ
そう思ったら体が勝手に動いて
気づいた時にはお父さんの胸元を蹴っていた
「 ぐっ… 」
お父さんが後ろに倒れる
今だ
ううん、今しかない
私は立ち上がって
震える足に力を込めドアノブに手をかけた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!