第4話

# 救いの手
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2018/12/23 10:44








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そして今に至る
これからどうしようか





とにかくお父さんとは会わないようにしないといけない
当然だけど私に友達なんかいない
だって外に出るのもほんとに久しぶりで
親戚にも何十年会ってない








出れたのはいいけど行く宛なんかあるわけなくて
“ はは、情けない ”


自嘲気味になりながら乾いた笑いを零す
体育座りになった私は腕の上にあごをのせる











まだ平気かなと思っていたけど


日が暮れてるからやっぱり外は肌寒く


頬に感じる冷たい風を遮るように


私は顔を腕の中に埋める
まだじんわりと口の中に残る錆の味







目を瞑れば眠気が私を誘う
これからの事は後で考えればいいや


なんて呑気なことを考えながら


そこで私は意識を手放した





























“ …い ”









“ お…い… ”









“ おい、 ”






低い声と体を揺する感覚に目を覚ます





“ んっ… ”


そっと目を開け


目線を上げる






“ …へ? ”










見えたのは全身黒で統一しマスクを付けた男の人




だ、だれ?




“ こんな所で何してんの? ”
質問よりもどうして私に話しかけたんだろう、ってことに頭が働く






“ 家出? ”


私がなかなか口を開かないのを察してか首を傾げてそう尋ねる


なにも答えないのも変だと思いこくりと頭を動かす










“ ふーん、で どうすんの ”
どう、するのって… なんでそんなことを聞いてくるんだろう


まさか警察に連れていかれる…?


そんな


またあの家に戻ることになるかもしれないなんてあんまりだ











“ あの、わたし ”


それだけは嫌でなにか言おうと咄嗟に口を開いた瞬間


それを遮るように放った言葉は予想外なもので










“ うち住むか ”








“ …え? ”


思わず間抜けな声が漏れる









ボソッ と聞こえたけど確かにそう言ったよね?
うち住むかって…









“ どーせ 行く宛ないんだろ? ”


真っ直ぐ私を見つめるその目にはお父さんの目とは違う何かがあって
気づいたら私は微かにだけどしっかりと頷いていた
“ ならいーじゃん ”
少し微笑み私の腕を掴む男の人
“ あ、あの…!? ”






私の声なんて耳に入ってないのか
男の人は真っ暗な道を真っ直ぐ進んでいった









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