無料ケータイ夢小説ならプリ小説 byGMO

前の話
一覧へ
次の話

第1話

親友が、同じ人を好きになるなんて
私が好きな人のことを、親友も好きになってしまう確率って、一体どれくらいなんだろう。
敷島 茜
敷島 茜
ごめん、しおり
私もるいさんのこと好きになっちゃった……
天羽 栞
天羽 栞
え…………

頭を強く殴られたくらいの衝撃と、鉛でも飲み込んだみたいな息苦しさ。


口をぱくぱくと動かしながらも、私は一言も発することができなかった。


カミングアウトした私の親友・敷島しきしまあかねは、それはもう申し訳なさそうで、今日に至るまで相当悩んだのは明らかだ。

天羽 栞
天羽 栞
(そうだよ。
茜はそういう子だもん)

それでも、ショックだった。


時を巻き戻したいくらいに。
天羽 栞
天羽 栞
(どうして、よりによって……)

何事にも引っ込み思案な私とは正反対で、茜は積極的かつ楽天的。


さらに周囲への気配りも完璧。


私にとっては、憧れの存在だ。


――勝てる、わけがない。



***



その日の夕刻。


大学からの帰り道はやや肌寒く、落葉が風に舞い、すっかり秋めいている。

天羽 栞
天羽 栞
はぁ……

溜め息はまだ白く変化しないけれど、私には鈍色のフィルターがかかってみえた。


落ち込んだって仕方ないし、いつまで経っても行動しなかった私にだって非がある。


そう自分に言い聞かせて、両親の経営する学習塾・天羽あもう塾へと入った。


事務のおばちゃんが、私を見つけてにっこりとする。

天羽 栞
天羽 栞
お疲れさまです
事務員
事務員
栞ちゃん、お疲れさま。
今日は各教室の議事録が届いてるから、資料整理を手伝ってもらえる?
天羽 栞
天羽 栞
はい、分かりました

ここは母方の天羽家が代々経営する塾で、母が塾長、父が副塾長兼室長。


他の地域にも六つの教室があって、来春にはまた新しい教室が開設される。


私自身も、小学一年から高校三年までここで学んでいた。


大学生になってからは、週に数回、ここで事務や雑務のアルバイトをさせてもらっている。


事務のおばちゃんから仕事に使うファイルを受け取って、自分のデスクに着いた。

塾生
塾生
あはは!
先生、それ絶対違いますよ!

PCの電源を入れると、一階の教室から子どもたちの笑い声が聞こえてくる。


時間割を見ると、類さんが担当している小学四年生のクラスだった。
高比良 類
高比良 類
いいや、辞書に書いてあるはずだよ
塾生
塾生
え~!?
塾生
塾生
あっ、ほんとだ書いてある!
高比良 類
高比良 類
ほら、言ったじゃんか

子どもたちに混ざって聞こえてくる類さんの声も弾んでいて、楽しそうだ。

天羽 栞
天羽 栞
…………

ふと、茜のことを思い出してしまい、キーボードをタイプする指が少し止まる。


私の長年の片想い相手――高比良類さんは、いわゆる〝近所に住む幼馴染みのお兄ちゃん〟だ。


七つ年上で、この天羽塾の元生徒であり、現在はここで正社員として講師を務めている。


そして、私の親友である茜までが、好きになってしまった人。

天羽 栞
天羽 栞
(なんで今まで、勇気を出して告白しなかったんだろう)

いくらでも、いつだってチャンスはあった。


それをみすみす逃してきた情けない自分を、恨めしく思う。


女の子としての自信のなさ、彼には〝妹〟として扱われていること。


もしも振られたら、その〝妹〟としての立場すら失ってしまうのでは、という恐怖。


でも、そんなものは言い訳に過ぎない。

天羽 栞
天羽 栞
(茜は私の恋心に気付いて、ずっと応援してくれていて。
恋バナだってよく聞いてくれたのに……)

――茜と私だったら、茜のほうがよっぽど類さんにはお似合いだ。


そう思いながら、奥歯をぎゅっと噛みしめて、文字入力を再開した。


【第2話へつづく】