第33話

〖第四章〗真実 8
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2022/10/09 13:00
竹下創佑
こんなところまで
来ていただいた上
すみませんが、
竹下創佑
岩瀬さん、
あなた今から
此岸にお帰りください。
岩瀬瑚夏
へっ?!
透坂つばめ
ちょっと何を
言っているんですか?!
思わず、
顔を近づけて
怒鳴ってしまった……



上官に……
透坂つばめ
命を削って
境界に来たのに、
何もしないまま
此岸に帰れってことですか?!
岩瀬瑚夏
つばめ……
竹下創佑
さぁ、
お送りしますので。
岩瀬瑚夏
……わ、わかりました。
透坂つばめ
瑚夏……
竹下創佑
透坂、お前は
戻って山下と合流していろ。
透坂つばめ
……わかりました。
竹下さんは
瑚夏を支えながら
この場を後にした。









山下煌大
遅い。
透坂つばめ
煌大……
山下煌大
待て。
今は待つんだ。
山下煌大
納得いかなくても。
その時の煌大の顔は
すべてを知ったような顔だった。
「わたしにも教えて」
と言いたかったが、
言えなかった。
瑚夏が、
命を削って境界に来たのに
竹下さん、あなたは鬼だ。
悪魔だ。
透坂つばめ
ひどい……
山下煌大
まぁまぁ、
煌大は
コーヒーを淹れてくれた。

いつもは美味しいコーヒーも
無味無臭。
全く味がしなかった。
列車の中、
隣に座る
美しい男に聞いてみた。
男は「あなたのことは何があっても守ります。絶対に消滅させたりしない。」
と、言った。
それはなぜかと聞くと、
男は「それはまず、この案件においてあなたの利用価値は非常に高い。」
美しい銀髪のように淡白で
少し悲しくなった。
男は続けて「それから、あなたが美しいからかな、夏の宝石のようだ。」
男はふっと表情を緩めた。
これってセクハラかな?と笑った。






「あなたの戸籍は明日からなかったものになるから、早急に荷物をまとめて──」
「ああ、境界の戸籍排除された子ね。」


目の前が歪んだ。

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