第32話

〖第四章〗真実 7
62
2022/09/18 07:38
岩瀬瑚夏
……
だんだんと瑚夏の顔色が

悪く、
一言で言い表せないほどに
悪く、

血の気が抜けたように
青白く、
ひんやりとした

魂の、
命の限界が近づく
独特の気配を感じた。
そこまで、
進行していたんだ……

症状は
どんなだろうか。
ある本には、
細胞が崩れていく痛みは
その人しかわからない

感じたことのない痛み。
痛みについて具体的な
資料がないこと、

特効薬がないことには
まず、その痛みを
体験した者が少ない。

また、
研究に回される前に、
消滅してしまう。
一刻も早く、
境界から離れなければ、

瑚夏は消滅してしまう。
岩瀬瑚夏
つばめ、
大丈夫だよ。
透坂つばめ
へ?
岩瀬瑚夏
だから、
心配ないよってこと
瑚夏は苦しそうに笑った。

ああ、
そんな顔しないで、

そんな苦しそうな、

笑顔を作らないで。
竹下創佑
岩瀬さん、
まだかかりそうです。
このまま
大人しく待っていれば
日付を跨ぐことになる。

こんな状態なのに
あと10時間以上、
命が持つか。
竹下創佑
……はぁ、
竹下創佑
4時間あれば十分か……
透坂つばめ
ていうか、
竹下さん山下は?
竹下さんは

ふっと笑いながら、
至急品の携帯電話ではない
私用の携帯電話を、

やはりあの美しい指で
操作した。
竹下創佑
安心しろ。
竹下創佑
大丈夫だ。

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