だんだんと瑚夏の顔色が
悪く、
一言で言い表せないほどに
悪く、
血の気が抜けたように
青白く、
ひんやりとした
魂の、
命の限界が近づく
独特の気配を感じた。
そこまで、
進行していたんだ……
症状は
どんなだろうか。
ある本には、
細胞が崩れていく痛みは
その人しかわからない
感じたことのない痛み。
痛みについて具体的な
資料がないこと、
特効薬がないことには
まず、その痛みを
体験した者が少ない。
また、
研究に回される前に、
消滅してしまう。
一刻も早く、
境界から離れなければ、
瑚夏は消滅してしまう。
瑚夏は苦しそうに笑った。
ああ、
そんな顔しないで、
そんな苦しそうな、
笑顔を作らないで。
このまま
大人しく待っていれば
日付を跨ぐことになる。
こんな状態なのに
あと10時間以上、
命が持つか。
竹下さんは
ふっと笑いながら、
至急品の携帯電話ではない
私用の携帯電話を、
やはりあの美しい指で
操作した。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。