第143話

最高のヒーローに
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2022/01/16 03:00
気がつくと、日は西の地平に傾いていた。



携帯の時計を見ると、既に16時を過ぎていた。









1週間の職場体験が幕を閉じようとしている。








バックドラフト 「いやぁ、それにしても……」






事務所への帰り道、バックドラフトが空を見上げながら口を開いた。




バックドラフト 「あなたちゃん、あんな強かったとはなぁ……。驚いて、腰抜かしそうだったよ!」





『 水圧を強く且つ自由に動かす 』





職場体験での課題を、最終日にクリアした。



未だに信じられないけれど。



たまたまかもしれない。





あなた 「いや!強くないですよ!!!まだまだです…。」





ただあの時は…………………






あなた 「あの時は『あの子供を助けたい』…それしか頭に無かったんです。」





今まで出した事の無い技だった。



あの技は、水圧が強いからこそ出来る技だと思う。








私は、自分の掌を見つめる。











あなた 「……私、少しは強くなれたのでしょうか。」




バックドラフトの所に来て、1週間。




学校での訓練より厳しい事が沢山あった。












あなた 「……ヒーローに近付けたのでしょうか。」







それでも諦めなかった。










強くなる為に。












『皆を笑顔に出来るヒーロー ・ ・ ・ ・』になる為に。












あなた 「私の努力は…………、」





バックドラフト 「報われてるよ。」






私は顔を上げ、バックドラフトを見る。



バックドラフトも、私を見ていた。









バックドラフト 「あなたちゃんは確実に1週間前より強くなってる。」


あなた 「………バックドラフト…。」








………、だめだ。







バックドラフト 「『あの子供を助けたい、それしか頭に無かった。』』






バックドラフトが私の言葉を繰り返す。




段々と、目頭が熱くなる。













バックドラフト 「それは紛れもなく『ヒーロー』だよ。」





あなた 「………ゥッ……ッ」





歯の隙間から声が洩れる。




拭いても拭いても涙が止まらない。











バックドラフト 「君は ───────── 」






バックドラフトは私の頭を撫でながら、言った。










































「 最高のヒーローになるよ 」 と。

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