気がつくと、日は西の地平に傾いていた。
携帯の時計を見ると、既に16時を過ぎていた。
1週間の職場体験が幕を閉じようとしている。
バックドラフト 「いやぁ、それにしても……」
事務所への帰り道、バックドラフトが空を見上げながら口を開いた。
バックドラフト 「あなたちゃん、あんな強かったとはなぁ……。驚いて、腰抜かしそうだったよ!」
『 水圧を強く且つ自由に動かす 』
職場体験での課題を、最終日にクリアした。
未だに信じられないけれど。
たまたまかもしれない。
あなた 「いや!強くないですよ!!!まだまだです…。」
ただあの時は…………………
あなた 「あの時は『あの子供を助けたい』…それしか頭に無かったんです。」
今まで出した事の無い技だった。
あの技は、水圧が強いからこそ出来る技だと思う。
私は、自分の掌を見つめる。
あなた 「……私、少しは強くなれたのでしょうか。」
バックドラフトの所に来て、1週間。
学校での訓練より厳しい事が沢山あった。
あなた 「……ヒーローに近付けたのでしょうか。」
それでも諦めなかった。
強くなる為に。
『皆を笑顔に出来るヒーロー』になる為に。
あなた 「私の努力は…………、」
バックドラフト 「報われてるよ。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!