私はボムボムくんと共に会場に入る。
お城の中はこれまたおとぎ話のようだった。
私達の頭上にはキラキラと輝くシャンデリア、
床は大理石で出来てあり、
パーティーテーブルには美味しそうな料理やジュースが並んでいる。
そして会場内には、ドレスやタキシードを着て仮面を付けた人達が50人程居た。
何か彼が言った気がするけど、もう一度聞こうとは思わなかった。
今、自分はおとぎ話のような世界を体験しているんだもの。
ずっとこんな日が来るのを夢見ていた。
私が目の前の光景に目を奪われていると、ボムボムくんがそう言って何処かに行ってしまった。
ボムボムくん最初は怖い人だと思ってたけど、
そんな事ないのかも。
「 皆様、お待たせいたしました。」
会場内に響く男性の声。
騒がしかった会場が、一気に静かになる。
「 今宵は秘密の仮面舞踏会にお越し頂き、誠にありがとうございます。存分にお楽しみ下さい。 」
アナウンスが終わると共に、お洒落な曲が流れ始める。
すると、近くにいた男性が女性をダンスに誘い始める。
段々とその数は増え、皆、曲に合わせて踊り始める。
完全に出遅れた。
私は踊っている方達の邪魔にならないように、端に向かう。
その時だった。
誰かの足に引っかかり、バランスを崩してしまった。
慣れない服装だから、受けの体勢も取れない。
私は顔面から倒れる事を覚悟した。
しかし、その痛みは来ず。
ゆっくりと目を開けると、誰かの手が私の腰を支えていた。
その人物は、
金髪の彼だった。
ボムボムくんはそのまま私の手を取ると、中央へとエスコートした。
え?
え??
そう言うとボムボムくんは私の腰に手を回し、先程取っていた手は何故か恋人繋ぎに。
突然の事に、私は驚く。
絶対、間抜けな顔をしているだろう。
そんな事はお構いなしに、彼は曲に合わせて脚を動かし始めた。
私も頑張って、曲を聴き脚を動かす。
本当は上の空なんだけど。
ぐっと彼の顔が近づく。
あぁ、駄目だ。近距離、耐えられない。
丁度そのタイミングで、一曲目が終わった。
周りの男女が互いに礼をして、また違うペアを組む。
これ以上、ボムボムくんと居たら蒸発しそうだったから、本当に丁度良かった。
ボムボムくんはずっと私を見ている。
踊り終わったのに恋人繋ぎはそのまま、離そうとしない。
もう二曲目は流れている。
他の方と踊らなくても良いのかな……。
そんな事を考えていたら、
レッドライオットが私を呼んだ。
そして、私の空いているもう片方の手を握った。
え、これってどういう状況……?
( 片方の手はボムボムくんに握られて、もう片方は
レッドライオットに握られている。 )
ぶんぶんっと首を横に振る。
ギュッ
ボムボムくんが、先程よりも強く手を握り締めてきた。
私は、ボムボムくんを見る。
彼は、じっと私を見つめている。
ど、どうしたらいいの…!??
良い決断をしないと……。
2人ともが傷つかない答え方を ───
" 勇気と優しさを忘れずに "
そこにお母さんの言葉が蘇る。
優しさだけでは駄目。
勇気も必要なんだ。
どちらかを断る勇気が。
私が選んだ決断。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。