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あなた 「ごめん…!…待った?」
爆豪 「…!!待ってねェ、今来たとこ。」
あなた 「良かったぁ…。じゃあ…よろしくお願いします…!!」
爆豪 「……おぅ。」
「── 本日、12月25日、クリスマスは全国的に晴れる模様です。しかし、夜にかけて雪が降り少し寒くなるでしょう。 皆さん、メリークリスマス!!」
街にそびえたつ大型ビジョンから流れる天気予報を聞きながら私達は歩く。
今日はまちに待ったクリスマス。
周りには、家族連れや友達、カップルが沢山行き交っている。
そして私の隣には、大好きな彼の姿がある。
憧れだったクリスマスデートが始まろうとしています。
本当は朝からのはずだったんだけど、急遽、A組だけ特別授業が入ったから昼ご飯を食べてからのデートになった。
き、緊張してきたァァァ……。
昨日、お茶子ちゃん達にこの事を伝えたら目をキラキラ輝かせてあっという間にデートコーデが完成した。
それを今着てるんだけど………。
白色のセーターに薄茶色のスカート。
髪はツインテールの編み込みに黒のベレー帽。
いつもの自分からは全く想像もつかない服だ。
かっちゃん、どう思ってくれたかな…。
そんな事を考えていたら、いきなり手を握られて。
あなた 「ぇ…!?」
私は驚きの余り立ち止まる。
か、かっちゃんから…手を……!!!
爆豪 「…嫌なら良い。」
そう言うと、かっちゃんは先に行こうとする。
あなた 「や、嫌じゃない!!」
私はかっちゃんに追いつき、ぎこちなく手を重ねた。
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あなた 「…ねぇねぇ、どこ向かってるの?」
さっき繋いだ手はいつの間にか、恋人繋ぎになっていた。
それにしても、今、私達はどこに向かってるんだろう…。
かっちゃん、行き先教えてくれないし……。
爆豪 「…これ。」
かっちゃんはポケットから映画のチケットを2枚取り出した。
あなた 「え?!こ、これ!私が見たいって言ってた……!!」
前に三奈ちゃん、透ちゃんと共同ルームで見たいねって盛り上がってた映画。
だけど、大人気だからチケットは即完売だったはず。
それをかっちゃんが持ってる。
爆豪 「黒目達と話してるの聞こえた。」
黒目とは………あ、三奈ちゃんね。
まさか私の為に取ってくれたの………?
あなた 「………大好き、天才。」
爆豪 「知っとるわ、行くぞ。」
私達はショッピングモールの中の映画館に入った。
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大人気なだけであります、この映画。
まだラストでもないのにもう泣けてきた。
でも私は映画を見ながら、ふと思った。
かっちゃん、こういう映画絶対興味ないよね、と。
果たして、見ているのだろうか。それとも、寝てる……?
いや、かっちゃんが寝るのはない気がする。
見て確かめよう。
………いやいやいや!
なんて事を考えてるの自分…!!
それより映画を見なきゃ!!
雑念を振り払うように首をぶんぶんと振って映画に集中する。
それを邪魔するのは一人しか居ない。
隣から手がスっと出てきて、私の手を握ってきた。
あなた 「ふぇ…ッ!!」
つい声が出てしまい慌ててもう片方の手で口を押さえる。
驚きすぎて、涙が引っ込んだ。
私の手を握ってきた人をゆっくり見てみると、
ニヤニヤしてます。
一言言ってやりたいけど、映画の真っ最中だからそんなのも出来ない。
いきなり、何なの……?!
何がしたいんですか………!??
私は戸惑いの気持ちを押さえ、再び映画を観る。
そんな私の心情も気にしずに、かっちゃんはにぎにぎと私の手を触ってくる。
しゅ、集中出来ない………!!!
触られてる方に意識がいってしまう。
でもそれは気付かれないように…と、スクリーンを見続ける。
その後、映画が終わるまでかっちゃんのにぎにぎ&恋人繋ぎ攻撃は続くのであった。
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爆豪 「はッ、楽しかった。」
あなた 「…何が楽しいんですか。」
映画館を出ると、外はもう暗くなり始めていた。
爆豪 「お前の反応、全部。」
あなた「全く映画に集中出来なかったじゃないですか。」
そうだ。全く集中出来なかった。
寮に帰って、三奈ちゃん達と感想言い合おうって思ってたのに!
途中から、全然内容が頭の中に入ってこなかったし!!
映画館出る時も、周りの人「良かったぁ~」とか言って大号泣してるのに、私は全然泣いてないし、むしろ顔真っ赤だし、かっちゃんは何事もなかったかのような顔してたし。
あなた 「…………。」
私は頬を膨らまして彼を見つめる。
不機嫌オーラばんばん出します。
爆豪 「~わかったァ、今度も一回連れてったるわ!」
かっちゃんは、私の顔を見ると勢いよくそっ
ぽを向きそう言ってくれた。
あなた「……ほんと?」
爆豪 「ほんとだわ。だから………。」
そしてかっちゃんはまた勢いよくこちらを向いて私の頬をおさえた。
整った彼の顔がぐっと近付く。
あなた 「…!?」
爆豪 「機嫌直せ。」
彼の瞳の中に私が見える。
それと同時に、心臓がドキッとはねる。
あなた 「は、はい……。」
爆豪 「…分かったんなら良い。飯食べに行くぞ。」
かっちゃんは、私の頬から手を離し先に歩き始める。
あぁ、今日私、命日かもしれない。
かっちゃんがカッコよすぎて死んじゃうんじゃないか。
あなた 「…うん!!」
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夜ご飯も食べお店を出ると、ショッピングモールはイルミネーションで彩られていた。
ショッピングモールの中心にある大きな木は、クリスマスツリーとなっている。
そのツリーの前に今、私達は居る。
あなた 「わぁ…!すっごい綺麗……!」
爆豪 「……そうだな。」
周りを明るく照らしているツリー。
この季節だと、皆の注目を浴びる。
行き交う人達も、一回はこのツリーの前で止まる。
でも、それ以上に私はツリーの一番上にある星に目を惹かれた。
あなた 「ねぇ、かっちゃん。」
爆豪 「…どした。」
あなた「…私、あの一番星みたいになりたい。」
かっちゃんは、じっと私を見てる。
あなた 「皆を明るく照らす…一番星。」
子供達がはしゃぎながらツリーを見てる。
あなた「…皆を笑顔に出来るヒーローに!」
あのNo.1ヒーロー ・ オールマイトの様に私はなりたい。
私はオールマイトみたいに強くはない。
だけど、誰かを笑顔にする事は出来る。
爆豪 「……あなたならなれる。」
そう言って、私はくしゃっと頭を撫でられる。
一気に、身体が熱くなる。
あなた「ほんと?じゃあ、頑張ってなるね!……皆を笑顔に出来るNo.1ヒーロー!」
かっちゃんは、" No.1ヒーロー " に思いっきり反応する。
爆豪 「は?!いくらお前でもそこは譲らねェ!!俺がNo.1ヒーローになる!」
あなた「…かっちゃん相手だと厳しいなぁ~でも、なりたいなぁ…」
爆豪 「ならんくてえぇわ!!!」
本音を言うと、私は別にNo.1ヒーローにはならなくても良い。
ほんとに、誰かを笑顔に出来るヒーロー。
それでいいんだ。
………でも、一つ、なりたいとすれば…
あなた 「かっちゃんがNo.1ヒーローになるんだったら私はすぐ隣で支えられる人になりたいな…。」
私は輝く星を見ながら呟く。
爆豪 「……!?は!?」
ぼそっと呟いた言葉に何故かかっちゃんが反応する。
彼を見ようと横を向いたら、大きな手で目元を覆われた。
爆豪 「…見んじゃねぇ。」
でも塞がれる前、耳が赤くなっていたのが見えた。
え、なんで?耳赤くなる要素あった…?
自分の言った言葉を思い出す。
" 私はすぐ隣で支えられる人に "
ま、まさか自分が言ったのって逆プロポーズ…?!!
あなた 「……ッ!え、ちょ、そ、そういう意味じゃ!」
視界が明るくなったので必死に説明しようとした。
けど、その前に彼の唇が私の口を塞いだ。
その時間は一瞬だったけど、私はとても長く感じた。
あなた「…か、っちゃん…?」
唇が離れた後、彼は言った。
「No.1ヒーローなったら、俺から言うからそれまで待っとけ。」って。
年に一度のクリスマス。
夢のようなクリスマス。
貴方の隣にもし居る事が出来ていたら、
今日の事を思い出せたら良いな。
─── Happy Merry Christmas
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!