一佳ちゃん、物間くんと別れた私は、一週間ぶりに
A組の寮の扉を開ける。
いつものように皆の明るい声が
聞こえてくるんだろうなって思ったら、
共同ルームは誰一人いない。
物音ひとつしない、静寂に包まれていた。
あなた 「え、みんな寝た?」
私は携帯を開いて時間を確認する。
現在の時刻19時15分。
皆ご飯を食べ終わって、共同ルームに集まって雑談に花を咲かせている時間帯だ。
一体どうして??
私は考えを巡らせる。
今までの寮生活で、この時間帯に共同ルームに居ない出来事といったら………
あなた 「………あ、」
渚 「お姉ちゃぁぁぁぁぁん!!おかえりぃぃぃ!」
私が答えに辿り着いた瞬間、お風呂上がりなのか首にタオルを巻いた渚が奥から出てきた。
渚は私の顔を見ると目を輝かせて、勢いよく抱きついてくる。
一週間の疲れが吹き飛んだ気がした。
家族の力って凄いな、と渚を抱きしめながら思った。
あなた 「ただいま!!元気にしてた?」
渚 「超元気ッ!!!」
あなた 「ふふっ、なら良かった!!」
そんなやり取りをした後、私は先程考えていたことを
渚に聞いた。
あなた 「ねぇ、皆が共同ルームに居ない理由って…,」
渚 「みんな自分の部屋で勉強してるよ!」
「 来週期末テストだからかな???」
一気に現実に引き戻されました。
職場体験に必死すぎて、すっかり忘れてた。
あ、でも ────────────
渚 「まあお姉ちゃんなら今からでも大丈夫だよ!別に頭悪いわけじゃないでしょ?」
あなた 「………。」
─────── 私には関係ない。
期末テストの点数がどうであれ、林間に行くことは
決まっている。
皆の敵として、だけど。
あなた 「……勉強するか!!!」
渚 「お、おお!頑張ってね!!」
勉強は将来の役には立つだろうから、しておこう。
私は自室に戻って、嫌な事を考えないようにひたすら教科書と向き合ったのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。