⑅∙˚┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈˚∙⑅
?? 「あなた………あなた…!」
?? 「あなた、顔上げて……?」
?? 「あなたの可愛い顔が見えないじゃない…。」
?? 「わしの大好きなあなた…。」
誰かの声が聞こえる…。
とても聞き覚えのある声。
私はゆっくり目を開ける。
すると私の前に4つの影があった。
周りは何にもない。
このままどこまでも続いてそうな場所。
ここ、どこ?
?? 「あなた!良かった…顔見れて…。」
一番左の影が動く。
けど、顔は全く見えない。
あなた 「えっと……。」
誰ですか?って聞きたいけど、なんか聞きづらい。
名前知ってるって事は、私も知ってる人物だと思う。
?? 「…!?分からないのか?」
?? 「ちょっとあなた、落ち着いて。そりゃそうよ。だってあなたから私達は見えないんだもの。」
?? 「そうなのか?いや、それは悪かったなぁ…。」
?? 「久しぶりにあなたちゃんの顔を見れて嬉しいわ。」
あぁ……分かっちゃった…。
私の前にいる人たちが一体だれなのか。
?? 「あなた…わしらの事分かったか…?」
ほら、もうその声…その優しい話し方…。
おじいちゃんだ。
だったら、その周りにいるのは、
お母さん 、 お父さん 、 おばあちゃん。
私の大好きな
────── 家族
あなた 「お母さん…お父さん…おじいちゃん…おばあちゃん…!」
私は立ち上がって4人の元に走る。
しかし、途中で柔らかい何かにぶつかる。
祖父 「そこから先は進めんのじゃよ。あなた。」
祖母 「そこの壁が地上と空の境界線になるの。」
あなた 「境界線……?」
え、凄いマンガみたい。
母 「皆、あなたの味方だからね。」
父 「あなたの気持ちちゃんと分かっとるからな。」
あなた 「私の気持ち……?」
お父さんが何故かそこを強調して言った気が…。
父 「ほら!言ってたじゃないか。あの男の子に。」
あの男の子…………
“ かっちゃんに私の気持ち分かるわけない "
あなた 「かっちゃん……?って、聞いてたの?!」
母 「私達はずっとあなたの近くに居るわよ。」
祖母 「例えあなたちゃんから見えていなくても。」
祖父 「ずっと一緒じゃよ。」
あなた 「── ッ!」
ずっと一緒……………
お母さん達とずっと……………
父 「それにしても、あなた、良い彼氏を持ったなぁ。」
祖母 「ほんと!まさか勝己くんと!信じられないわ!」
母 「勝己くんは昔から仲良くしてくれてたものね。」
祖父 「良い奴じゃよ。前も、わしの病室に来てくれたんじゃ。」
父 「おおぉ!お父さんもその勝己くんと話したかったなぁ…。」
何か、凄い盛り上がってる…。
話に入りづらい。
いや、というか今まあまあ気まずいんだけど。
あなた 「あ、あの……。」
父 「どうした?」
あなた 「実は今、かっちゃんと気まずくて…。」
4人 「え……?!「なっ!!」 」
父 「何だと?!なぜ?!」
祖母 「それは大変だわ!」
祖父 「二人とも少し落ち着くのじゃ…!」
お父さんとおばあちゃんの影が凄い動いてる。
はしゃぎすぎだと………笑笑
母 「今は気まずくてもいずれ仲直りできるわ。あなたなら大丈夫よ。お母さん、応援してるからね…!」
あなた 「お母さん………うん!」
ふふっとお母さんが笑う。
ちゃんとお母さん達の顔、見たいなぁ……。
祖父 「あ、あなた。ちょっとわしから1つ言いたいことが。」
あなた 「おじいちゃん、どうしたの…?」
おじいちゃんが一歩前に出る。
祖父 「急に居なくなって本当にすまんな…。渚もあなたも辛い思いしとると思う。
気持ちが落ち着くまでゆっくり休んでほしいんじゃ。辛い思いのままだと何事も楽しくなくなる。」
母 「おじいちゃんの言うとおりよあなた。本当に無理しないでね。あなたはすぐ無理しちゃうんだから。」
父 「あのマンションの火事の事も、海での練習の時もだ。お父さん達、どれだけ心配したか…!」
あなた 「…分かった…!落ち着くまで休む事にします。」
祖母 「ええ。それが良いと思うわ!」
おばあちゃん、さっきのかっちゃんの話から動きが激しいしルンルンオーラがこっちまで伝わってくる…。
おじいちゃん達の言う通り、学校は少しの間休むことにしよう。
あなた 「お母さん、お父さん。おじいちゃん、おばあちゃん、ありがとう…!」
母 「またあなたの夢の中、遊びに来るわね。」
父 「その時は勝己くんの話聞かせておくれよ。」
祖母 「おばあちゃんにも!よろしくね。」
祖父 「渚にもよろしく頼むな、あなた。」
あなた 「うん!じゃあね!」
4つの影は私に向かって手を振った。
人生で一番楽しい夢だった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!