第111話

私の上にだけ
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2020/12/21 12:24
上履き事件から1週間経っても、嫌がらせが無くなる気配は無い。


寧ろ酷くなる一方で。



教科書、筆記用具、体操服まで無くなっていく。


最初は放課後には私の元に戻って来ていたのだが、最近はゴミ置き場に捨てられていたりする。




そんな私を皆や先生は心配してくれている。

でも私は本当の事を言ってない。

はぐらかしている。




だけど唯一、相澤先生には話した。

一度呼び出された時にこれまであった事を全て。



相澤先生はあの女の人に何か言おうとしていたけど、私はそれを止めた。


先生の力は借りずに自分で何とかするって言った。


先生は納得してなかったけど、『本当に酷い時は学校側で対処する』という条件付きで一旦引いてくれた。






常闇くんとはあの一件から以前よりも話すようになった。


最初は物静かで近寄り難かったけど、話してみたら優しくて実直な性格で少し中二臭い所もあるけど((


とても良い人だった。







そんな常闇くんと私が話しているのが気に食わない人も居るらしいけど。













あなた 「いつまで嫌がらせ続くのかな…そろそろ限界なんだけど……。」


そんな考えを巡らせながら、私は無くなっていた数学の教科書を取りに学校の端にあるゴミ置き場に向かう。


あなた 「……あった。」


ゴミ置き場の端に置かれた私の数学の教科書。

捨てられてないだけまだマシなのかな。


教科書を取って教室に戻ろうとした時、5限の予鈴が鳴った。



あなた 「わ、もうそんな時間…急がないと…!」


私は走ってもと来た道を戻る。
















その時だった。









全身が一気に冷たくなった。



髪の毛や服から滴る冷水。



私の上にだけ降る雨。






「あらぁ、ごめんなさぁい!」



すると上の方から声が聞こえた。


上を見ると、校舎の窓からあの女の人がバケツを持って顔を出していた。




「バケツが重くてバランス崩しちゃったのぉ!わざとじゃないの!」



私は何も言葉を出せずに只々上を見る。




「本当にごめんなさいねぇ!!」




女の人は、思い切りの笑顔を私に見せ中に入っていった。












先程まで急いでいた事も忘れて、私は暫くその場に立ち尽くした。


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