第2話

出会い
194
2021/06/27 13:44
父様、父様、仕事のお話聞かせて? 
母様、母様、歌を歌ってください。
兄様、兄様、一緒に遊びましょう?


幸せな、当たり前の日々は、ずっと続くと思ってた。
でもそんなことはなくて、いつかは終わりを告げる。










僕が何をしたの?
どうして母様も父様もいなくなっちゃったの?
僕が何をしたの?
どうして兄様も僕から奪おうとするの?
僕が何をしたの?
どうして僕はこんな仕打ちを受けなきゃ行けないの?

酷い、酷いよ。

父様を返してよ。またお話聞きたいよ。

母様を返してよ。またお歌を歌ってよ。

兄様を返してよ。また一緒に遊ぼうよ。




僕を置いていかないでよ。
センラside
黄百合 センラ
黄百合 センラ
はぁん。さすが坂田家。
俺はセンラ。御三家の1つ、黄百合家の当主や。

ここは御三家の1つ、坂田家の本家。
今、俺はある人の囲い者の誕生パーティーに招かれてここにいる。

坂田 明
坂田 明
お、センラ〜。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
坂田。
坂田 明
坂田 明
来てくれたんやね。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
そりゃ行くやろ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
パーティーなんて久ぶりやなぁ。
坂田 明
坂田 明
今日は俺の囲ってる奴らが誕生日なもんでね。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
へぇ7月11日なんやぁ。
※8+24+10=42
42×(9+1+5+3)=756
5+6=11

7月11日。
コロコロコロ…コツン
黄百合 センラ
黄百合 センラ
ん?なんだこれ。鞠…?
坂田 明
坂田 明
どれ。あぁこれは…
坂田の視線を追うと、そこにいた彼に息を飲んだ。
彼の瞳は、左右で色が違い、右の目に蝶がいたのだ。
坂田 明
坂田 明
浦田渉。俺の弟みたいなもん。
浦田 渉
浦田 渉
浦田渉です。よろしくお願いします。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
よろしく。あの…その目は…
浦田 渉
浦田 渉
え?あぁ。これ?
これは遺伝なんです。母様からの。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あぁ遺伝。坂田家の使用人にそんな遺伝持ったのいたか?
坂田 明
坂田 明
センラ。失礼だぞ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
なんで?
坂田 明
坂田 明
彼、俺が当主になる前の当主…浦田家の嫡男だぞ?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
え゛っ!?
浦田 渉
浦田 渉
言わなくても良かったのに…
黄百合 センラ
黄百合 センラ
これは…失礼しました…
浦田 渉
浦田 渉
いえいえ。大丈夫ですよ。
坂田 明
坂田 明
じゃ、パーティーで会おう。
渉。池のそばで鞠付きするなよ。
浦田 渉
浦田 渉
はい。坂田様。
…ところで、まーしぃは今日パーティーに来ますか?
坂田 明
坂田 明
お前らの誕生パーティーだ。来るよ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
まーしぃって?
浦田 渉
浦田 渉
あ、俺の双子の弟です。
なかなか部屋から出てきてくれないんで、今日は会えるかなって。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あぁ。
浦田 渉
浦田 渉
まーしぃは、俺と双子なんて思えないくらい綺麗な顔してますよ。似てるのはこの目だけで、ほかはなんも。
坂田 明
坂田 明
こら渉。自分を落とさない。
浦田 渉
浦田 渉
はぁい。
坂田 明
坂田 明
じゃあ、後で。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
おう。
坂田と渉が去ってくのを見てから、俺は庭を散歩し始めた。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
(俺の家の庭ももうちょい花植えるかなぁ…薔薇とか…百合…)
コロコロコロ…コツン
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あれ。
転がってきた鞠を拾い上げる。
また渉か?でも…この鞠は色が違う。
緑じゃない。紫だ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…誰や?そこにいるのは。
植木の影に隠れる者に声をかける。
隠れているつもりなのだろうが、紫の着物の裾から白く細い腕が覗いてる。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
人影に歩み寄り、その腕を掴んだ。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
誰やっ…て…
浦田 志麻
浦田 志麻
あ…
目があった瞬間、俺の中に電気が走った。
相手も俺を見て硬直している。
大きな紫と緑の目が俺を捕らえて離さなかった。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…わた…る?
浦田 志麻
浦田 志麻
ハッ…
ばっ!と腕を振り払うと、彼は後ずさりをした。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あの…
浦田 志麻
浦田 志麻
来ないで!
俺を睨みつけて、さらに後ずさる。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
君…渉の弟?
浦田 志麻
浦田 志麻
兄様のこと…知ってるの?
睨みつけてた顔が、不思議そうな顔に変わった。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
まぁうん。
浦田 志麻
浦田 志麻
誰といた?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
え?
浦田 志麻
浦田 志麻
渉兄様は誰といたの?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
えっと…坂田?
浦田 志麻
浦田 志麻
…坂田と、いたの?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
そうやけど…どしたん?
浦田 志麻
浦田 志麻
…なんでもない。あんたに関係ない。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
こら。見た感じ、君俺より年下でしょ。年上には敬語使わなきゃ。
浦田 志麻
浦田 志麻
なんであんたなんかに…
彼に近づき、その頬をぷにっとつねる。
浦田 志麻
浦田 志麻
いひゃッ…やぁっ!
涙目になりながら俺の服の裾を掴む彼。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
敬語。な?
浦田 志麻
浦田 志麻
ひゃいッ…わひゃりまひた…
ぱっと彼から手を離す。
浦田 志麻
浦田 志麻
ウルウル…
俺は彼の目線に合わせるようにしゃがみ、鞠を差し出した。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
はい。君のやろ?
浦田 志麻
浦田 志麻
…!
うん!
嬉しそうに顔を赤らめて、紫の鞠を受け取る。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
大事なものなんやね。
浦田 志麻
浦田 志麻
母様が…くれたの。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
お母様は…
浦田 志麻
浦田 志麻
渉兄様から聞いてないんですか?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
まぁ…うん。
浦田 志麻
浦田 志麻
2年前に死んだんです。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あ…それは…
浦田 志麻
浦田 志麻
大丈夫です。俺、もういきますね。
浦田 志麻
浦田 志麻
あの人に…怒られるから。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
あのッ!
浦田 志麻
浦田 志麻
黄百合 センラ
黄百合 センラ
パーティーの時に…また…
浦田 志麻
浦田 志麻
…会えたらね。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
ならせめて、名前だけでも…
浦田 志麻
浦田 志麻
…志麻。浦田志麻。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
志麻…
浦田 志麻
浦田 志麻
また、会えたら。
黄百合 センラ
黄百合 センラ
会えないん?
浦田 志麻
浦田 志麻
分からないから。あ、俺は御三家の当主の人嫌いだから会わないです。あなたの身分は?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
…なんで嫌いなん?
浦田 志麻
浦田 志麻
…それはいいです。で、あなたの身分は?
黄百合 センラ
黄百合 センラ
俺は…黄百合の家臣や。
浦田 志麻
浦田 志麻
そう。ならいい。
じゃあ、会えたら。
志麻が去っていく後ろ姿を見て、膝から崩れ落ちた。
あんな美しい人がほんとにこの世にいるのだな…

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