父様、父様、仕事のお話聞かせて?
母様、母様、歌を歌ってください。
兄様、兄様、一緒に遊びましょう?
幸せな、当たり前の日々は、ずっと続くと思ってた。
でもそんなことはなくて、いつかは終わりを告げる。
僕が何をしたの?
どうして母様も父様もいなくなっちゃったの?
僕が何をしたの?
どうして兄様も僕から奪おうとするの?
僕が何をしたの?
どうして僕はこんな仕打ちを受けなきゃ行けないの?
酷い、酷いよ。
父様を返してよ。またお話聞きたいよ。
母様を返してよ。またお歌を歌ってよ。
兄様を返してよ。また一緒に遊ぼうよ。
僕を置いていかないでよ。
センラside
俺はセンラ。御三家の1つ、黄百合家の当主や。
ここは御三家の1つ、坂田家の本家。
今、俺はある人の囲い者の誕生パーティーに招かれてここにいる。
※8+24+10=42
42×(9+1+5+3)=756
5+6=11
↓
7月11日。
コロコロコロ…コツン
坂田の視線を追うと、そこにいた彼に息を飲んだ。
彼の瞳は、左右で色が違い、右の目に蝶がいたのだ。
坂田と渉が去ってくのを見てから、俺は庭を散歩し始めた。
コロコロコロ…コツン
転がってきた鞠を拾い上げる。
また渉か?でも…この鞠は色が違う。
緑じゃない。紫だ。
植木の影に隠れる者に声をかける。
隠れているつもりなのだろうが、紫の着物の裾から白く細い腕が覗いてる。
人影に歩み寄り、その腕を掴んだ。
目があった瞬間、俺の中に電気が走った。
相手も俺を見て硬直している。
大きな紫と緑の目が俺を捕らえて離さなかった。
ばっ!と腕を振り払うと、彼は後ずさりをした。
俺を睨みつけて、さらに後ずさる。
睨みつけてた顔が、不思議そうな顔に変わった。
彼に近づき、その頬をぷにっとつねる。
涙目になりながら俺の服の裾を掴む彼。
ぱっと彼から手を離す。
俺は彼の目線に合わせるようにしゃがみ、鞠を差し出した。
嬉しそうに顔を赤らめて、紫の鞠を受け取る。
志麻が去っていく後ろ姿を見て、膝から崩れ落ちた。
あんな美しい人がほんとにこの世にいるのだな…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。