第6話

第6話
363
2020/07/11 02:45


キーンコーンカーンコーン……




9月のスタートを告げるチャイムが、学校中に響き渡る。

秋の風が何となく気持ちいい。

僕は、いつも通り廊下の端っこで本を読んでいた。
ころん
ころん
……


ガッ

友達
友達
おい、今日も金持ってきてねぇのかよ?あぁ?!
さとみ
さとみ
ッ……!すみません……


あーあ。まただ。またこの声。

僕の次の標的。



ころん
ころん
……
友達
友達
チッ…明日持ってこねぇとどうなるか分かってるよなぁ?!あ?!
さとみ
さとみ
…はい…………
友達
友達
…………?


突然、奴は何かに気づいたようにさとみくんのバッグに手を出した。

奴がバッグから取り出したものは、苺の形のキーホルダーだった。

さとみ
さとみ
あッ……!それは!
友達
友達
…ふーん、お前もこれ持ってたんだw


そーいえば、さとみくんから貰ったんだっけ。

あんなもの、もう持ってても意味なんてないのに。

友達
友達
…………

ポイッ



奴は、苺のキーホルダーを窓から投げ捨てた。

さとみ
さとみ
あっ……!
友達
友達
…明日は持ってこいよ。
さとみ
さとみ
……


さとみくんは、窓の下をじっと見つめて、涙を流していた。

ころん
ころん
……ねぇ
さとみ
さとみ
……
さとみ
さとみ
ころん…ごめん…キーホルダー……


いつもいつも、さとみくんはこうして僕に謝ってくる。


「さとみくんが謝ることなんて無いよ」


そう言いたくても、言葉が出てこない。

言えるはずがない。

だって、だって……






いじめを仕掛けたのは







































……僕だから。



ころん
ころん
…………
ころん
ころん
いいの……
ころん
ころん
だいじょぶ……


もうさとみくんも分かってるだろうに、僕には何も言わない。

なのに、ずっとずっと僕に謝ってくる。

それを僕は適当な言葉で返すだけ。したい事は何一つ出来ていない。



……そっか、したい事……


大好きなさとみくんをいじめさせてまで、僕がしたかった事……


奪いたかった……弱ったさとみくんを、僕の物にしたかった……













…………こんなに僕の本性は腐っていたなんて




いつからだっけ。こんな考え方するようになっちゃったのは


そっか。僕の命がたまたま救われた、あの日……






━━━━━━━━━━━━━━━




土下座……

プリ小説オーディオドラマ