キーンコーンカーンコーン……
9月のスタートを告げるチャイムが、学校中に響き渡る。
秋の風が何となく気持ちいい。
僕は、いつも通り廊下の端っこで本を読んでいた。
ガッ
あーあ。まただ。またこの声。
僕の次の標的。
突然、奴は何かに気づいたようにさとみくんのバッグに手を出した。
奴がバッグから取り出したものは、苺の形のキーホルダーだった。
そーいえば、さとみくんから貰ったんだっけ。
あんなもの、もう持ってても意味なんてないのに。
ポイッ
奴は、苺のキーホルダーを窓から投げ捨てた。
さとみくんは、窓の下をじっと見つめて、涙を流していた。
いつもいつも、さとみくんはこうして僕に謝ってくる。
「さとみくんが謝ることなんて無いよ」
そう言いたくても、言葉が出てこない。
言えるはずがない。
だって、だって……
いじめを仕掛けたのは
……僕だから。
もうさとみくんも分かってるだろうに、僕には何も言わない。
なのに、ずっとずっと僕に謝ってくる。
それを僕は適当な言葉で返すだけ。したい事は何一つ出来ていない。
……そっか、したい事……
大好きなさとみくんをいじめさせてまで、僕がしたかった事……
奪いたかった……弱ったさとみくんを、僕の物にしたかった……
…………こんなに僕の本性は腐っていたなんて
いつからだっけ。こんな考え方するようになっちゃったのは
そっか。僕の命がたまたま救われた、あの日……
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土下座……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。