僕は、ある病室に行く…
彼は戻らぬ人になってしまったけど
それでも僕はその人の病室に行く
そう独り呟く…
声が届かないとわかっていても
もう相方を失うのは耐えられなかった
元、相方の万が
優しく僕の肩に手を置き
昔のように優しい笑顔で
僕に優しく言い放つ
僕とモモのRe:valeは
いい方向にと良く事が進んだ…
でもいい事ばかりじゃない
あの日を境に…
彼の、モモの様子が変になったから…
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いつものように
元気で可愛く癒される声で
僕を呼ぶモモ…
僕の言葉数少ない事には
慣れたらしく
いつもの言葉の
掛け合いはこんな感じ
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何時からだろうか…
いつもの表情とは違った
笑みを浮かべながらモモは言う…
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ごめんね、ユキ…
ユキは優しいからさ…
本当の話をしたら
自分のせいにしちゃう……
こうでも言わないと
分かってくれそうにないから
ごめんね…『ユキさん』………
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そうだった…
まだ…バンさんの失踪
気にしてるんだ…きっと…
ユキは優しいから…
オレから見てもジェントルだから!
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オレさ…
今すごくヤバそうな
ストーカーにあってるんだよね…
そのストーカーの子は
狂ってるみたいに
包丁突き付けて来たりして
『モモさえいなければ』って
最初は脅しだと思ってたけど
激しくなって来ちゃった…
オレさえいなければって事は…
目的はバンさんかな?って
考えたけど違う…
インディーズの頃からのファン…
つまり、まだ一緒にやってる
ユキ方を向いている
だからオレがユキを
守らないとって思ったから
『ごめんなさい…ユキさん』
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くるりと背を向けて
ありったけの笑顔を…
精一杯のいつもの表情をユキに向ける
オレが楽しくなくちゃ誰も
ハッピーじゃない
例えそれが作り笑いでも
みんなの為にユキの為に
楽しくしないと…
あ……あの表情…
ユキがオレの事を
とても心配してくれてる顔
あんな顔させたくないのに…
ユキ…オレもね
ユキが心配してくれてるみたいに
ユキを心配しての行動なんだ
オレの戦い方は自分で決める
ユキを守るなら
なんだってしちゃうんだ
『ごめんなさい…』
本当は怖いよ?苦しいよ?
寂しいよ?哀しいよ?
でも…笑顔を向けないと…
『失敗したら笑っちゃえ!
泣いても、悔やんでも
どうにもならないんだったら
楽しい方がいいでしょ?』
そう言ったのはオレだから
オレは笑顔でいないと……
『ユキに100%のハッピーを!』
そう言ったのもオレだから
オレが凹んだりしたら
ハッピーを注ぐどころか
まるで邪神みたく
悲しみと苦しみを
与える側になる
だからオレは笑顔でいないと…
【ごめんなさい…ユキさん…】
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気付くのが遅かったかもしれない…
モモの表情がいつもと違うのは
この時からだ……
その時……
丁寧にドアがノックされる
一織、かな?
まさか……まさか……
憧れの人が家に来てくれるなんて!
あ、ユキの家だけどww
こんなのじゃダメじゃん!
明るくしないと!
楽しくしないとオレらしくない…
なんて思いながら
笑顔を振りまく…
精一杯の作り笑顔を…
どうしても、二人が…
バンさんとユキが羨ましい
オレは…
身代わりなんかじゃない
相方じゃない
オレは…
ユキの盾になるんだって
決めたから…
自己犠牲って言われてもいい
自殺行為って思われてもいい
ユキだけでも
助けたいって思うから
だけど、二人がケンカしてるの見たら
哀しいんだよ…苦しいんだよ…
偶にあの表情が出ちゃうのは
なんでだろ…
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。