最初は何を言っているのか分からなかった。
離れる?何に?私と?
「夢」
その言葉。私は思い出した。最後の夏2人でのデート。そんなような話をしていた。
歌手。私には程遠い存在。
でも分かる。ヘチャンは歌が上手いしダンスもできる。
確かにそうだ。歌手なんて本当にひと握りしか掴めない夢。
そんな凄い夢を追いかけるのに恋なんてできない
でも私は無理だった。
ヘチャンの夢を応援しないと。
頑張れって言わないと。そう言い聞かせているのに私は止まらない。
もう何も分からなくなってきた。
悲しいよ。辛いよ。
ヘチャンどうしてよ。
ロンちゃんも泣きながら下を向いていた。
息が苦しくなって。
ロンちゃんが私を呼んでいるのは気付いていたけど無視して部屋のドアを開けたら
チソンの事なんて無視したのは初だろうか。
もう誰の目も、姿もみたくなかった
外。夕日は落ちていて、夜。
でも、その暗闇を照らす待ち。
私はそこのベンチに座った。
ヘチャンには頑張って欲しい。
夢を叶えて欲しい。そう思ってる
でも、あんなに近くにいた人が遠くに行ってしまうなんて考えただけで苦しい。
他だって、そんな大事な事なら一番に言って欲しかった。それが私を苛立たせた
そこで、静かに流れる川を泣きながら、眺めていたら
マクオッパだった。
コンビニ帰りだろうか。何かが入っている袋を持っていた
何故か強がってしまう私。
忘れてた。
もう本当に消えちゃうんだ。
今日は9月1日。
11日って、2週間もないじゃん。
なぜ皆、私に嘘をつくのだろう。
そんなに信用ならないのか。
本当に優しいマクオッパ。
マクオッパの背中を見つめて数分。
また私は川を眺めた
周りはキラキラ光っているビル。
ヘチャンもそんな人になるのかな。
私がダメなんだ。
高校二年生にもなってちゃんとした夢もなくただ生きている。
でもヘチャンは夢に向かって頑張ろうとしている。
見習って応援しないといけない。
「一番に言って欲しかった。」
私はその自分自身の言葉が強く心に残ってしまう。悪い意味で。
何を最初に考えればいいのか分からなくて。
気づけばまた泣いていて
聞き覚えがある声だな。
優しい声だな。
ヌナ?
心配してきてくれたのか、少し息が切れている状態。焦ったその顔の私の弟
めったに人に触れないチソンが私を優しく抱きしめてくれた。
弟に励まさせるなんてダメな姉だななんて思いながらチソンの胸の中で思いっきり泣いた。
優しく私の頭を撫でてこう言った
皆がこう言っているんだ。
本当にヘチャンは馬鹿で優しい人
私を抱きしめていた手は私の手に移動した。
こんなに優しい弟だったっけ。
クラスの女の子が惚れちゃうね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。