side あなた
後輩の家に泊まり、その日はそこから出勤。
家に帰ると、兄だけが家にいた。
佐久間さん帰ったんだ。とホッとした。
兄「おかえり」
『ただいま』
兄「飯、スーパーのお惣菜でごめんけど」
『全然!ありがとう』
荷物を置いて、手洗いうがいをして、
リビングに向かった。
兄「あなた、冷蔵庫にプリンとシュークリーム入ってるから、食後にでも食べな?」
『買ってきてくれたの?!』
兄「俺じゃないよ。佐久間がお前のためにって」
…佐久間さん?
『…なんで、』
兄「さぁ?」
もう、わたしの事なんて、気にしなくていいのに…こんな事されたら、まだ好きでいいのかと、勘違いしてしまう。
プリンも、シュークリームも、
とっても美味しかった、
でも、とっても切なかった。
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そんなこんなでモヤモヤした日々は過ぎ、お礼も言わなきゃ行けないのに、
自分から会いに行くことも出来なくて、
1日もユミちゃんのお店にも行かず、金曜日を迎えた。
週末の重たい体を引きずって帰り道を来たら、
家の前の街灯に照らされる、金色の髪が見えた。
『佐久間…さん、』
家の中を見ると、もう兄は帰宅している。
なんで、外で待っているのか、私にはわからなかった。
佐「あなたちゃん!」
久しぶりに呼ばれた自分の名前に、
胸がキュッと痛んだ。
もう、涙が出そう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!