一日の作業を終えて、
ご夫妻が営まれている民宿にお邪魔する。
一室を借りて、束の間の休息。
今はカメラも無いし、羽を伸ばす。
佐「疲れた…」
照「なんか途中から、変に緊張してなかった?」
佐「え?」
照「なんか質問にたどたどしさがあった」
家族のこと聞いたあたりからかな…。
佐「いや、まだ確証が無いんだけど、家族構成とか、お子さんの年齢がさ、彼女の家族と似てて…」
照「彼女、霜月さんて言うの?」
佐「うん。ご両親の話ってあんまりしないから…お兄さんと同居だし、」
照「連絡してみたら?」
佐「荷物、今マネのとこなんだよね、」
マネージャー、荷物持ったまま次の打ち合わせ行っちゃってるんだよなぁ。
照「こんなことってある?」
佐「無いよね?!無いと信じたい!」
照「とりあえず収録中は意識しないように、」
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収録再開は、夕ご飯作りから。
…って言っても、佐久間さんに包丁握らせちゃう?!舘様のアシスタントしかした事ない佐久間さんだよ?!
妻「じゃあ、このナス乱切りで切ってねー」
佐「乱…切り?」
妻「こうやって切るのよ」
慣れた手さばきで料理を進めていくお母さん。
この手際の良さや、今日の料理のレパートリーがあなたの料理と重なる。
いやいや、ほんと、まさかね…?
妻「ほら、手が止まってるよー」
佐「は、はい!」
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出来上がった料理はどれも美味しかった。
そして、どこか懐かしい味。
佐「お母さんの料理は安心感がありますね!」
妻「安心感?初めてよ、そんなこと言われたの」
照「いや、ほんと、上手いっす」
夫「米も沢山あるから食べていいからなー」
さっき俺が切ったナスは揚げ浸しになっていた。
それを1口。
佐「パクッ…!!!」
確信的だった。
味付けが、あなたと一緒だった。
妻「佐久間さん?お口に合わなかったかしら」
佐「いえ!この揚げ浸し好きっす!」
器が違うから?俺が切ったから?
不揃いのナスに何も考えていなかったのに、
味は大好きな彼女の料理で…。
それから、収録はお風呂に入って今日はお終いだったけど、あの味が、頭から離れなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。