うらたside
屋上の柵に体を預け、ぼうっと空を見上げていた。
この空を見れば、志麻も少しは思いとどまることができたのだろうか。
風が吹き抜けて俺と坂田の服と髪をなびかせる。
この時期の風は冷たく、指が悴む。
スマホの画面を見た瞬間、俺も言葉を失った。
『月崎志麻 援交』
『月崎志麻 恋愛 最悪』
『月崎志麻 ウザイ』
想像以上の検索変換…
坂田が援交の検索変換を押す。
志麻の援交疑惑についての投稿はありえないくらい沢山あった。
坂田がスマホを見せる。
1番最初の投稿は…今年7月。
それは一つの動画だった。
坂田が再生ボタンを押す。
この描写…美術室で見たのと同じだ。
ガラッ
美術室の戸が開き、入ってきた人物をみて志麻はハッと顔を上げた。
入ってきた人物にはモザイクが入っていて、誰だか判別はできない。
志麻の前に座り、なにか話した後、志麻は堪えていたものが一気に吹き出たかのように泣きじゃくりながらその人物に抱きついた。
そこで動画は終わっている…
モザイクをよく見ると、薄く切れ長の目が見えた。
坂田が作業をし終えると、俺に画面を突きつけた。
そこに居たのは…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!