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第1話

*1
58
2020/10/03 15:20
街路樹が色付く季節


肌を刺すような冷たい秋風


冬の気配を感じ


自然とコートのポケットに手を入れる



:もうマフラーしてもいいかな


そんなことを考えながら


目的地へ足を運ぶ



真っ直ぐに続く大通りから

一本小道へ入る

車通りは少なく、人もあんまり通らない



いつもの忙しい世界よりも

ゆっくりと時間が過ぎていく場所



私はコーヒーの匂いに誘われるように重たい木の扉を開ける



カウンター席が5つ

テーブル席が3つ

あまり広くない店内には

木の匂いとコーヒーの匂い充満している



コーヒーは飲めないため

いつも紅茶を頼む



窓側の席を腰掛け

かばんから読みかけの小説ととヘッドホンを取り出す


ヘッドホンを頭に着け

本を開く

本来は音楽を聴くものだが

ぶら下がる線は行き場なく垂れ下がっている







ふと外を見ると

街頭が明かりを灯し

スーツを着た

急ぎ足の大人が大通りを目指して歩いていた






時計を見ると

すでに18時を過ぎていた





席を立ち

店長にお礼を言い

重い木の扉を押す




一段と冷たくなった秋風が

私の体を通り抜ける





現実世界に引き戻されたような感覚





一人

家への道を歩く

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