第2話

01.卯月の別れ
317
2026/03/30 05:00 更新










卯月、



四季を表す木々が生い茂る山の麓に彼は居た。

今年、あのかの有名な忍術を学ぶ学園、名を忍術学園に新入生として入学する"立花"あなただった。

彼は物小屋学園へ持参する物を選別していた最中だ。

年季の入った木の板で出来た物小屋には、布団とは言えない薄い布が一枚敷いてあり、他には生ゴミや使えないと言われた縄や火薬やと沢山置かれていた。

大体の物は彼の兄の不要物である。


風呂敷には、一人で作った折り畳める虫網と虫籠、筆に髪。竹で作られた簡単な水筒。

肩には、彼の一番のお気に入りである蝶が入れられた虫籠が掛けられていた。


あなた
じゃあ、行ってくるよ



物小屋にそう小さな声で話し掛け、彼は優秀な兄が居る忍術学園へと足を動かした。

兄の従姉妹や伯母に挨拶無しで、彼は長年の鎖から解放されたかのように素早くここを走り去った。









彼は予定より早く物小屋を出てしまった。

この時間帯に出で、忍術学園に真っ直ぐ向かえば、きっと組はい組かろ組になってしまう。


彼はそれをなぜか頑なに嫌がった。


わざわざ、彼はは組になろうと森へ入り、虫網と虫籠を使って蝶を捕まえる。
捕まえた蝶を籠に入れ、筆と紙でスケッチした後、描き終われば蝶を優しく逃がす。


あなた
君達は本当にいつ見ても美しいね…



彼は毎度彼ら彼女らに必ずそう言って蝶を手放す。

彼の描いた蝶はいつも目を見開くほど美しく、本物の様な立体感があった。
触れて本物か偽物か、確かめたいくらいに…

そのくらい、彼は蝶を愛している。


あなた
さて、どうしようか
あなた
きっと今頃い組はもう決まったであろう
あなた
ろ組になる人達は明日くらいになる
あなた
それなら明後日まで蝶を捕まえ、描きながら忍術学園へ向かおうか



彼は一睡もせず、蝶を見つけては蝶を描き腸を手放す…それを繰り返していた。

彼の蝶への愛は、この室町時代で珍しいくらい…とびっきり大きな愛だろう。


あなた
おや、もう朝日が登っている…
あなた
少し小腹が空いた、近くの町には団子屋がある。そこで団子を買うとにしよう



彼は虫網と虫網を折り畳み風呂敷に入れ、この森の近くにある町へと向かった。









あなた
やはり、町は賑やかだ…



あなたは蝶だけでなく、似た様で似ていない蛾は勿論。羽の着いた虫が好きであった為、町などほぼ行った覚えがなかった。

最後に行ったのは、従姉妹達の買い物の荷物持ちだ。


物小屋の近くには虫網や虫籠が何個も作れる笹や木が沢山あり、物小屋にあった斧で切り落とし、夜な夜な加工して虫を捕まえて絵を描く。
それが当たり前で彼にとっては幸せだった。

町で好いた人と出掛け、すいた人にバレない様に簪を買い、団子屋に行ったりして相手を気遣う。最後の最後に簪を好いた人の髪に挿して…
なんてことするより、一人で自分の幸せに没頭する方が、二倍…何百億倍楽しいのだ。

そして、彼にはそもそも人間への興味がはぼないので、好いた人なんて居なかった。
居たとしても、多分幻覚だと思う。好いた人はきっと蝶や他の虫の擬人化したような者なのだろう。


あなた
団子を食べてきたけれど…



村の中心部にある団子屋は繁盛しており人が多かった。

素直に言うが、人の多いところでなんか団子を食べたいと思わない。一人静かに食べられる場所が良い。

周りを見渡せば、少し離れた町の比較的端で狭いところに団子屋の旗がチラッと姿を見せた。
旗は小さく、普通の家と見間違えるほど。

彼は少し足を早めてその団子屋向かった。


あなた
『団子屋 沙々菜』…か、



『団子屋 沙々菜』という団子屋の中、受付には年老いた女性。小さめの厨房の方に年老いた男性が居た。
お客は片手で数えるくらいだけ。

ここには静かに食べられそうである。

心が落ち着き、彼は受付の方へ向かった。


老婆
おや、こんな所にどうしたの?



そう彼女は優しい声で声を掛けてくれた。

まだ背の丈が低い僕に目線を合わせるようにかがみ、にっこりとした笑顔で対応してくれる。


あなた
お団子を食べに来ました
老婆
あらまあ、団子を食べに…
老婆
それならここじゃなくても…
あなた
ここがいいんです
あなた
よその団子屋は騒がしく私は耐えれません



彼の聴力は一般の人より頭一つ、いや頭三つは抜けていると言われるほど良かった。

地元では千里先までの会話を聞き取る事ができると言われていたが、全然そんなことはないのだ。


老婆
そうかい、
老婆
何を頼みましょう
あなた
三色団子を三つ、みたらしを二つ
あなた
お願い致します



老婆はにっこりと微笑み『はいよぉ』と返事をして厨房の方へ回っていった。

老夫婦は手際よく団子を作ってくれた。、

焼き目が薄いのか濃いのか…と言われるかも知れないが、少し濃く付いていて食べるととても美味しい。


正直に言うが、人気店=最も美味しい。
と思っている人達は損をしていて愚かだと思う。

人気店は全国に広まり人気店は全国に建てられていく。
そうすれば、味の質は必ず落ちていく。

逆に言えば、人気店でない方が美味しい時もある。


あなた
とても美味しかったです
あなた
またこれを食べに来たいです
老婆
ふふそうかい、
老父
実はもう辞めようと思っていたが、そう言われたらやる気が出てきたよ
老父
ありがとうな、坊や
あなた
次の休み、必ずここに来ますね
あなた
その日まで続けてください
老婆
待っているわ
あなた
それでは、またお会いしましょう



忍術学園で無事に居られたら。









プリ小説オーディオドラマ