第5話

5話
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2018/04/01 17:18
(にしても、あいつ。俺には一言も話さねーな。幽霊だから香以外には聞こえねーとか?)

「なぁ、香。当然で悪いがあいつ、名前も分かんねんだろ?」

「あ、うん…。分からないって言ってた。」

「じゃぁ呼ぶ時、なんて呼んだらいいんだ?」

「あぁ、そうですねー。」

「いい加減、そいつやその子って呼ぶのも可哀想になってきてよっ。何か考えろよ。」

「えぇー!私がですか!?」

「無かったら名無しくんとかにするぞ。」

「えぇー、それこそ可哀想ですよ!」

「だったら早く考えろー。」


俺の家に向かう間、あいつはずっと下を向いたままだった。

それが俺には不気味に感じた…。




そうこうしているうちに俺の家に着いていた。


「ほら、着いたぞ。ここが俺の家だ。」

「へぇー、以外と普通ですね」

「そりゃそうだろ。そこらの家と変わらねーよ。ほら、中入れ。」

「はーい、お邪魔しまーす。」

「先に俺の部屋に行ってろ。」

「翔の部屋どこー?」

「あぁ、階段上がって左。一番奥の部屋。」

「はーい。どんな部屋だろ」

「普通だよ。」

「………フフッ…。」

(んっ!?あいつ今笑った?……あ、でも話す声が聞こえねーんだから笑った声も聞こえねー…よな…。まぁ…いいや)

「なんか無かったけなー。菓子はともかく飲み物…。あった!珈琲とジュース…。どっちも持っててみるか!」


「うわー、綺麗な部屋。というより何も無いって感じ。やっぱり私の部屋と違うなー。さーて、どこにあるんだろ。」

「おーい、香。どっちの……。何してんだ?」

「うわぁ!!びっくりしたー。驚かさないでくださいよ!」

「あー、悪い悪い。で?どっち飲む?珈琲とジュース。」

「じゃぁ、ジュースで。」

「ほらよ。」

「ありがとうございます。」

「それで、さっき何してたんだ?」

「えっ!?あー、この子の記憶のヒントをさが…」

「本当は?」

「…男の子特有のあれを…探してました…」

「それで、それはあったか?」

「見つかりませんでした。」

「そりゃそうだ。そんな物持ってないしな。」

「えぇー。なんか想像とちがーう!」

「お前、どんな想像してんだよ。はぁ…香!お前はここに何しに来た?」

「この子の記憶のヒントを探しに来ました!」

「それで?」

「まだ、探してません…。」

「ったく!…おい!えぇーっと、名無し…くん!ここにお前の記憶のヒントになりそうな物はあったか?」

「!!。………。」

「なぁ、香。こいつ何か言ってるか?」

「ううん、何も言ってないですよ。」

「そうか…。ここにはねーのかなー?」

「…ちゃん……。」

「ん?」

「…か…ける…にい……ちゃん…。」

「えっ?今…お前……。」

「どうしたんですか?」

「なぁ!今こいつ何か言わなかったか?」

「え?だから、何も言ってないですって。」

(本当か?俺には聞こえた。なのに香には聞こえてない…なぜだ?)

「ボク…は。か…ける…にいちゃん…だけ…に、はなし…かけて…る…」

「…俺、だけに?」

「うん……」

「翔?」

「香!こいつが俺だけに話しかけてるって言ってるんだが…。」

「あ、やっと…話す勇気が出たんだね。」


そう香が言うと幽霊の彼はコクりと頷いた。


「…?なんだ、話す勇気って。」

「学校で、翔が来るのを待ってる時この子が言ったの。翔には自分から言うからって。」

すると、さっきまでの掠れた声ではなく俺の耳に、はっきりした声が聞こえ始めた…。

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